ダーリンは芸能人BOOK

□優しい鼓動
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もう今年も12月―――…。
私は貴方への想いをずっと持て余してる…。

『Wave』のメンバーの…

藤崎義人くんへの想い。

芸能界に入って神堂春プロデュースによって、歌手活動を中心にしてる私。


『Wave』のメンバーはみんな楽しくて優しい。

だけど…私にとって義人くんだけは『特別』な存在で…。


私はもうすぐ新曲を出す為、かなりテンポの早い曲の自主レッスン。

本当はオフなのに、私は1人、ダンススタジオで何度も何回も繰り返し踊る。

激しいサビの部分の踊り…。
それを完璧にしたくて集中していた。


スタジオの入り口の私に向けられた視線にも、気付かないまま……。



「…あっ!もうこんな時間!?」

気付けば窓の外は真っ暗。
明日はドラマの仕事があると思い、帰り支度をしていると…。


――カタン…。

物音のした方に私は目を向けた。


そこには―――…


「…義人くん?」


大好きな彼の姿に…彼の名前を自分で呼びながら、胸を高鳴らせる…。



「……送ってく…」


「え…?」


「……嫌ならいい」


「いっ…嫌じゃない!」



そう私が慌てて言うと、彼の顔が一瞬だけ柔らかくなった。


(…あ…今、笑った…?)


義人くんは…
今年のコンサートの時も、一瞬柔らかい表情を見せていたけど…。

無意識だったらしい。

でも…、私がコンサートの後に楽屋で見た彼の優しい笑顔。

あれも無意識だったの…?

私達はレッスンスタジオを後にした。



街はイルミネーション一色で、私は義人くんと2人歩いていた…。

夢の中にいるようで幸せな気持ち…。


そんな事を考えて歩いていた私。


―――ガクンッ!


「…きゃぁっ…」


「……!」


急に足元がぐらつく。
軽い段差につまづいてしまい、前のめりになって転びそうになる。


だけど、私の身体をしっかり抱き止めてくれたのは、他でもない義人くんで…。
身体中に熱を帯びた感覚。


「………!」


「…………」


胸がドキドキし過ぎて破裂寸前…。


(こんな時…どうしたらっ…)


私はまるで金縛りにあったみたいに動けない。


義人くんは私を見詰め…



「……ほとんど休憩無しで…踊り続けてたんだろ…?」


義人くんはそう私に言った。


「…え?…どうして…」

「……………」


義人くんは黙って私を強く抱き締めたまま、2人の時間は止まった…。
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