『恋乱』・[恋戦]・「二世の契り」短編
□「二世」〜永久に続く赤い糸〜 ≪雅刀≫
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◆◆◆
『アンタを、愛している』
『アンタが未来で幸せでいてくれると思えば、それが俺の幸せだ』
―― 雅刀は別れる時に、私に確かにそう告げて
『…また来世で…』…と。
話せば長くなるけど、
私は謙信様の命を助ける為に、時は戦国、永録四年に突然飛ばされてしまった。
里親さんの所から、家出してしまった、10歳になる男の子、まーくんを探しに。
それが、私達二人の…全ての始まりだった。
私が水輪(みなわ)の声を聞いて、家の側の『謙信様の祠』が建ててある泉の中へ…。
浅い泉なのに、どこまでも深くて…息が出来て。
そして、たどり着いた場所が戦国時代だった。
正し、私は『永録四年の』。
―― あの日。
私が気付かない内より先に、まーくんは泉に来ていた。
…だけど、いつまでも私が泉から出て来ないから、慌てて泉に飛び込んだ――。
そして、まーくんがたどり着いた場所は私と同じ、戦国時代。
けれど、同じ戦国時代でも私より、十五年も先の時代だった。
そこで、十五年の歳月を
【軒猿】の一人『雅刀』として生きていたこと…。
軒猿、先代頭領の刀儀さんは当時、泉で幼いまーくんを見付けて、本来の…未来から来た彼に『雅人』から『雅刀』、と名付けたという。
『これからは『人』ではなく、軒猿の懐刀であれ』
そういう意味合いを込めて。
そして成長した雅刀は、
私と思いもしない再会を果たしたのだ。
私は…
勿論、成長した雅刀を知らない筈で、それでも懐かしく思えた。
そして、『毘沙門天の御使い様』として歓迎された私には、常に護衛を兼ねての監視が就いていた。
だけど、何故か何時も顔を合わせ、側に居てくれたのは雅刀だった。
ぶっきらぼうで、不器用で、だけど本当は優しい…『25歳の雅刀』――…。
偶然は必然で運命。
私達は愛し合っていた。
それは『現代』(いま)も……。
◆◆◆
あの時、泉で別れなければ、私達はあの時代で二人、生きて行けたのだとも思えた。
残っていれば、違う未来があったとも思う。
二人、一緒ならどこまでも。
だけど、私がそうしなかったのは、もしかしたら現代(いま)の時代で雅刀と、また別の違う未来で廻り合えるかも知れない。
何故か、私の胸に予感めいたものが感じられたから。
……里親さんの家から居なくなった『まーくん』は、現代に戻っても全く手掛かりもないまま、行方不明のまま……。
だって、本当のまーくんこと雅人くんは、軒猿としてあの時代に生き残ると決めていたから。
それを知ってるのは、
事情を知ってるお姉ちゃんと私の二人だけ。
そんなある日の事――。
「ねぇ、**
私、この間不思議な男の人に会ったんだ〜」
お姉ちゃんの明るい声に、私は首を傾げた。
「不思議な男の人…?」
私の返事に、うんうんと嬉しそうに、お姉ちゃんは何度も頷いた。
「**にも紹介したい人なの!
今から一緒に来て!」
「い…今からって何で?」
お姉ちゃんが、急かす様に私の手を引っ張る。
そして、有無を言わせず、私を家から連れ出して…お姉ちゃんの顔は、凄く嬉しそう…と言うか、楽しそうで、目はキラキラしてる。
「ねぇ、お姉ちゃん!
どこ行くの?
また謙信様の祠じゃ…?」
「違うってば〜☆
奇跡が起きたの♪
…あれ?
この場合は運命、…かな」
ますます訳がわからない。
仕方なく、まるで引き連られる様に、お姉ちゃんの後を歩く。
(一体何なんだろ…?)