世界で一番君の声が

□恐いんだから仕方ない
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「私、帰る」

「………はぁ?」


そうと決まればさっさと帰ろう!ということでいそいそと帰る支度をする。


「え、アンタマジで帰るの?」

「うん、帰る」

「昼休みになったばっかりだよ?放課後奥村くんに約束つけられたんじゃないの?」

「ふっ、それが嫌だから帰るのだよ。友ちゃん」

「いやドヤ顔で言われても」


まぁ放課後用事あったしね。
遅いより早いに越したことはないのだ。
何より奥村くんと話なんかしてたら多分間に合わなくなる。



「へぇー。なまえが用事あるとか珍しいね。なんの用事?」

「よくぞ聞いてくれた!」

「うわ地雷踏んじまったよ」

「明日はね、なんと!ハニハニ☆シスターズのゲームの発売日なのだ!初のゲームだよ!?コレは買うしかないっしょ!それでねそれでね、300人限定でゲームを買った人にシスターたちのフィギュアが!フィギュアが貰えるんですよ!しかも完全生産限定版!世界にたった300個しかない超レア物!300個もあるのはちょっと複雑な気分だけど、まぁそれだけ人気があると思えば自然と許せる!あぁ!なんて不思議なシスターズ!素晴らしい!素晴らしいよ!これは奥村くんと話をしてる場合じゃないよ!奥村くんなんかよりハニハニ☆シスターズ!ラブ!愛して…」

「わかったもういい」


多分今の私の顔は(´・ω・`)←こんな感じだ、多分。


「…あれ、明日発売なのになんで今日行くの?」

「何言ってんのさ。並ぶからだよ」

「え、今から行くの?」

「うん」

「予約はできないの?」

「うん」


友ちゃんは盛大にため息をついた。
そして、何故か可哀想なものを見る目でこちらを見てきた。
私は可哀想でもなんでもないよ。


「……まぁいいよ。先生には上手く言っとくから。明日学校は?どうすんの?」

「買ったらいったん帰ってお風呂入ってから行くよ」

「ん、分かった。じゃあ早く行ってこい」

「友ちゃんありがとーう!」


だいぶ呆れてたみたいだけどなんとか了承を得て買いに行けることになった。
奥村くんには悪いと思うけど、まぁしょうがない。
クラスメイトよりハニハニ☆シスターズだ。
第一勝手に約束つけられたしね。
アレは約束とはいわない。


友ちゃんにじゃあ明日!と言って鞄を持って教室を出た。
あぁ、ゲーム楽しみだなぁ。
フィギュア貰えるといいなぁ。
にやけるのを必死に耐えながらふふふーんと廊下を歩く。
シスターたちが私を待ってるよ!
今すぐ行くからね、待っ


「あれ、みょうじさん?」



…ててね、ホント今すぐ行きますから。
誰か私のこと呼んでた気がするけどそれはないよ、幻聴だそうだうん。
私友達いないからね、うん。


「みょうじさん、どこ行くの?」


…幻聴じゃありませんでした。


「ああ…えと、奥村くん。どうも」

「どうも。じゃなくて、どこ行くの?」

「か、帰るんだよ」

「帰る?」


眼鏡がキラーンって光ったよ!
微妙に笑ってるみたいだけどその笑顔が逆に恐いよゴメンナサイゴメンナサイ


「…どうして?」

「ああの、ちょっと体調がよろしくなくて…」

「体調が悪い?見たところ顔色は悪くないみたいだけど?」

「え、えっと…」


冷や汗がやばい。
なんか怒ってるっぽいし。
私なにもしてないのに!
あ、やばい涙が出そうです。


「みょうじさん?」

「…う…うわああああああああごめんなさいいいいいい!」

「あっ、ちょ、みょうじさん!」



結局逃げましたごめんなさい。





恐いんだから仕方ない
(よし、決めた)
(奥村くんを徹底的に避けよう)


(120321)


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