世界で一番君の声が
□要注意人物
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トンガリ頭のあの人に会ってから、一週間が経った。
時間がある時は外に出歩いたりして探してはいるのだけれど、やはりなかなかすぐに見つかるものではない。
「はぁー…」
「あぁ、いいね。恋って。二次元だっけ?」
「違う!リアル!現実!」
そんな話を授業と授業の合間の休み時間にする。
最近私のせいでトンガリ頭のあの人のことばっかりだ。
「だいたいさ、そのトンガリ頭?の人にまた会えたら何をするつもりなのよ」
「うっ…そ、それは…」
「知らない人が急に話しかけてきたら相手も正直迷惑だしねぇ。そもそもなまえに逆ナンを出きるスキルがあるのだろうか」
「……あうちっ!」
「只でさえシャイなんだからさ、難しいんじゃない?」
「しゃ、シャイじゃないよ!今普通に話してるじゃん!」
「あたしの前だけでしょ?初めて話した時なんか会話にならなかったじゃん」
「………」
ごもっともですごめんなさい。
だって正直今まで親以外の人間とまともに話したことがないのだから。
理由は…聞かないで。
だが二次元のせいじゃないことは確かだ!
だからちょっと仕方ないと思う。
今、こうやって話せてることが本当に奇跡なのだ。
「…まぁあたしはアンタと話せて嬉しいけどね」
「と、友ちゃん…」
「誰だよ友ちゃんって。あたしの名前、友じゃねぇよ。……まぁ、なついてくれてるからいっか」
そして友ちゃん(仮)は急に真剣な顔になった。
どうしたのかと思い口を開こうとしたら、顔を近づけてきた。
内緒話をする時のように。
「ところで、さ。アンタがトンガリ頭の人の話をしてると絶対こっち見てる奴がいるんだけど、気付いてる?」
「ちょっ…友ちゃん(仮)…ちゅーしようとするなんて…。友ちゃん(仮)好きだけど私にはそんな趣味は…」
「オイ、話聞けよ」
「ハイ、ゴメンナサイ」
回りをきょろきょろ見回してみる。
少なくとも私の視界に入った人の中にはそんな人は居なさそうだけど…。
「え、いないよ。そんな人」
「いや、いるからね」
「はっ…!ま、まさか…トンガリ頭のあの人を狙ってる奴とか!?」
「お前馬鹿だろ」
もう一度よく教室内を見てみる。
そうしてると、一人の男子生徒と目が合った。
彼は私と目が合うとにっこりと笑ってきた。
優しそうな、人懐っこそうな笑み。
「…………誰?」
「お前マジかよ…」
友ちゃん(仮)は説明してくれた。
男子生徒は奥村雪男という名前だと。
入学式で新入生代表の挨拶(入試トップの人がする)をしていたらしい。
そのルックスと高身長、抜群の頭脳で女子にとても人気だと。
「へぇー、そんな凄い人がこのクラスにいたんだね」
「ここ一応特進科だからね」
やれやれ、と溜め息をついた友ちゃん(仮)はちょっとトイレ行ってくると言い残して行ってしまった。
友ちゃん(仮)がいなくなって暇になってしまったので、何もすることなんてないのに携帯を弄ってみる。
アプリでもやろうかな。
そう思ってアプリで遊んでると机に影ができた。
友ちゃん(仮)が帰ってきたのだと思い、おかえりーと気軽に言う。
「……みょうじさん」
「…あれ?」
聞こえてきた声は友ちゃん(仮)の声じゃなかった。
「ちょっと話したいんだけど、大丈夫かな?」
「え………」
有無を言わさずに私の前の席に座られた。
そこ、友ちゃん(仮)の席なんだけど。
「話すの初めてだね。僕の名前は分かる?」
「え、」
なんなんだこいつ。
え、何がしたいんだ。
私に何を話そうとしてるんだ。
だけど凄く期待した目で見てくるからさっき聞いた名前を思い出そうとしてみる。
……駄目だ、わからん。
「…お、奥…」
「うん」
「…奥田…くん?」
「……奥村です」
「す、すみません…!」
彼は苦笑いしながら名前を教えてくれた。
奥村、くん。
よし多分覚えた。
「そ、それで何か…?」
「…みょうじさんさ、さっきは普通に話してなかった?」
「え?」
「いや、僕と話してるとなんかさっきより元気ないし声小さいし…」
僕のこと嫌いなのかな…?と聞いてきた。
なんなんだこいつ。
恋する乙女か。
「あ、え、いや、そういう訳じゃ…」
―――キーンコーンカーンコーン
「あ、チャイム鳴っちゃった。みょうじさん、放課後は暇?」
「え、いや…」
「うん、じゃあ放課後話そうか」
そう言って奥村くんは去っていった。
いやいやいやいや、強制的すぎんだろ。
しかも暇じゃねぇよ。
私の中で彼は変人になった。
要注意人物
(こっちは話したいことなんかないのに)
(おーい、なまえ無事か?)
(と、友ちゃん…!)
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押せ押せ雪男(^P^)
(120224)
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