世界で一番君の声が

□こんな気持ち初めてだ
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一目惚れ、だった。
どこに惚れたのかなんて聞かれると、正直答えられない。
けれど、一目惚れだった。

青白い顔、隈の出来た目、目の色はとてもきれいな青で、緑色の髪、それは先がトンガリになっていて。
服装はもうすぐ夏間近だというのになんとも暑そうな、しかもジャンバーは裾がボロボロ、奇抜な色をしたシャツを着、ネクタイは上まできっちりと絞まっている上にベストを着ている格好だった。
その暑そうな格好を気にもせず、大量の食べ物を凄い勢いで食べていたその人の顔は無表情。
頬いっぱいに食べ物を頬張り、もぐもぐと食べては咀嚼して。

それを何度も繰り返す彼に、私は釘付けになってしまったのだ。





「……ということがね、あったんですよ」

「いやいやいや、…は?」

「だから、青白い顔に隈の出来た目、緑色の…」

「うん、それは分かったから。ってか緑色の髪の毛ってあり得ないよね。コスプレとかなら分かるけど、街を堂々と歩ける緑色の髪の毛の人いるかっちゅーの。しかも何?トンガリ頭?え、マジお前頭どうしたの?イカれた?…あぁ、元からだったね、ごめん。っていうか服装おかしくね?暑くね?」

「あああああ、酷い言われようだよ、もうちょっと優しく言ってよ泣いちゃうよ」

「泣けば?第一何?アンタが一目惚れ?ふはっ笑わせないでよ。三次元の人間には興味ないんじゃなかったけ?確か『二次元ラブ!!俺は二次元を愛してる!!!』とか言ってなかったけ?あ、もしかして二次元の人間?んでそのキチガイな頭が現実と捉えたと。あぁ、なんかこいつの友達とか嫌だわ」

「Oh……涙で明日が見えないぜ…」

「……そもそもそれ夢なんじゃない?」

「断じて違う」

「即答かよ」


ただいま昼休み。

私は町で見かけ、一目惚れをしてしまった男の人のことを友達に話していた。
結構毒舌だけど、きちんと私の話を聞いてくれる優しい人だ。

高校を入学してから、まだ二ヶ月しか経ってないけどもうすっかり仲良くなれた。
他の人はイマイチだけど。


「…んで、その人にまた会いたいと」

「そうなんだよー。同じ場所に行ったらまた会えるかな?」

「うーん…そんだけ目立つ人なら校内じゃすぐ噂になるよね。なってないってことは、この辺には住んでないってことだよなぁ…」

「そ、そんなぁ…」


しおしおと机に突っ伏しながら、横にかけてあった鞄から課題を取り出す。


「アンタ…」

「ん?何?」

「頭いいし顔もそこそこ可愛いのに…性格っていうか…」

「なんだよーはっきりしろよー」

「うざいんだよねぇ」

「そんなっ?!」

「オタク辞めれば?」

「いや、無理無理無理。オタク辞めたら私じゃなくなる」


そんな他愛もない話をしながら、学校から出された課題に取りかかる。


正直、真面目な連中が多いこのクラス、特進科からしてみれば、私達は浮いた存在だった。
今も、ただ話していただけなのにクラスメイトの何人かに睨まれている視線を感じる。
そんな光景を見て、溜め息がこぼれた。


「…どうしたの?」

「いやぁ?もったいないな…って」

「…そうだね」

「それよりあの人に会えないかなぁ…」


そんなことより私の頭の中はあの人でいっぱい、あの人が離れない。
どうやったら会えるか考えながら、課題を進めた。





こんな気持ち初めてだ
(…え、何にやけてんの気持ち悪い)
(ひ、酷い…!)


(120211)

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