永遠の夢
□きみは誰かの笑顔のために(、僕はきみの笑顔のために)
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「名字……」
「ぁ、ごめん……」
「いや、良いんだけどさ……その、大丈夫か?」
丸井の言葉に名字困ったような、寂しげな笑みを浮かべ曖昧に誤魔化す。
あと少しすればチャイムが鳴るだろうと思いながらも、丸井は目の前にいる名字をほおって置くこともできずに、気まずそうに頬を掻いた。
どんよりとした空が、まるで名字と丸井の心内を表しているようで、息が詰まる。
雨雲を漂わせた空が、ひどく憎らしい。
何もこんな状況で、と思いながらも太陽がサンサンと輝いていてもそれはそれで気まずい。
「……丸井。私、さ……」
―――― キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン……
名字が意を決して口を開くと同時に、タイミングが悪かったのか、運が無かったのか言葉を掻き消しながらチャイムが鳴り響いた。
出鼻を挫かれた名字は気まずさと恥かしさから、顔を背ける。
「……俺さ、菓子食いすぎてよく幸村君に怒られるんだよなぁ」
「ぇ……?」
「毎回毎回、食いすぎだのバランスが悪いだの。俺だって野菜の菓子食ってんのにさぁ」
真剣な表情で、丸井は同意を求めるように
名字を見つめる。
名字は一瞬、何を言っているのかわからなかったが、それを察したのか丸井がじれったそうに頬を膨らませた。
「だぁかぁらぁ!俺が野菜の菓子食ってるのに、怒る必要ねぇと思わねぇ!?部長の幸村君はまだしも、柳も真田も柳生も仁王もあのジャッカルも言ってくるんだぜ?」
「……フッ」
最悪だー。とぼやく丸井を横目に、名字は可笑しそうに眉根を寄せ短く息を噴出した。
必死に堪えてるのか、肩は小刻みに揺れ、無理やり押さえ込まれた声が微かにこぼれる。
「なっ!俺は真剣に話してるのに!?」
「あ、あぁ……ごめんごめん」
「ホントに思ってんのかよ」
クスクスと笑いながら謝る名字を疑うように見る。
しかし、その目線に悪意や憎悪は含まれておらず、安堵したような優しいものが惜しげもなく向けられていた。