永遠の夢
□伝えるはずの言葉を見失ってばかりだ
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「……」
気まずそうな雰囲気が漂う中、幸村は困ったような、哀しそうな笑みを浮かべ笑いかけた。
「久しぶりだね。丸井はまた買い食いでもするつもりなの?」
「……お久しぶりです」
「え、ぁ……まぁ、な。腹減ったし」
「程ほどにしないとダメだよ?」
名字は浅くだが、相手の顔が見えないくらいには頭を下げ、幸村の横を通り過ぎようとする。
後一歩、幸村の横を通り過ぎたと思ったときだった。
「重そうだね、俺も手伝うよ?」
「!!」
疑問詞のはずなのに、そこに名字の拒否権は無い。
驚いて名字が立ち止まれば幸村は気にした様子も無く、名字の返答を聞く前に半分くらいのノートを奪い取る。
軽くなった腕で残ったノートを抱きしめるように抱えなおす。
「ほら、丸井は早く購買に行ってきなよ。休み時間終るよ?」
「……っ!」
「……丸井?」
幸村の言葉に戸惑いを見せる丸井。
名字は小さな声で名を呼ぶが、丸井には聞えてないのか戸惑ったように目線をさ迷わせるだけだ。
「じゃあ、行こうか。名字さん」
「ぁ、……はい」
名字の一歩先を歩き出す幸村に続くように一瞬戸惑いながらも歩き出す。
その後姿を眺めながら、丸井は悔しそうに下唇を噛み締めた。
小さく入った亀裂からジワリと血が滲む。
そんな事もお構いなしに丸井は今にも噛み付きそうな犬猫のように威嚇した眼差しを幸村に向けていた。