永遠の夢
□今日も変わらず君を目で追う
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- 幸村Side -
ふわりと鼻を擽る匂いは相変わらずで、妙なくすぐったさを感じながら気付かれないように目を閉じた。
いつだったか、俺が好きだと言えば困ったような恥ずかしそうな笑みを浮かべる君に意地悪をしてみたくてふてくされた君の頬にキスをした。
雨のなか傘も差さず、馬鹿みたいに子猫と戯れていた君に差し出した傘は今も傘立てに残ったまま、あの時の面影を浮かばせる。
好きだと、君が言ってくれたことはなかったかもね。
いつだって愛を囁いたのは俺だけで、いつだって愛を聞いていたのは君。
何が悪いって訳じゃない。
大丈夫、わかってる。
君が俺を嫌いな訳じゃないって、わかってた。
君が自分よりも俺を優先してくれていたことだって知ってたよ。
気付かない振りをしてた。
君に気付いてほしくて、君の気を引きたくて……
必死に君の周りを引っ掻き回して、結局は俺に不安を感じた君が別れを告げたんだったね。
本当は、わかってたんだ。
あの時、俺が君を引き止めさえすれば君が俺の元に帰ってきてくれたことも、君が君なりに俺の気を引こうとした初めてのことだったのも。
知ってた。わかってた。理解してた。
だけど、それさえもあの時の俺には腹ただしくて、虚しくて、悲しくて、無性に泣きたくなった。
君に情けない姿を見せたくなくて、強情を張らなければ、こんな想いは知らなくてすんだのかな?
今日も変わらず君を目で追う
変わらない君に、愛しさを感じて。