永遠の夢

□君の視線の意味に気付いてしまった
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帰宅の生徒に混じって学校から去ろうとする名字の姿があった。

きちんと校則を守って着こなされた制服。

少し明るめの茶髪が日に照らされれば金髪に見えないこともない。

キラキラと反射する日光を眩しそうに見上げる名字を見つめる一つの視線。


「あれ……幸村君?!」

「丸井……」


久しぶり、と人懐っこい笑みを浮かべながら駆け寄ってくる姿は見るものが見れば犬そのものだ。

パァッと輝く瞳は嬉しいと喜びを表現するには十分すぎるものだろう。

鮮やかな赤い髪が振動と共に揺れ、ふわりと独特な軟らかさを感じさせる。


「てか、こんな所で何してんだよ?部活行かねぇの?」


コテンと首を傾げながら正論を問う丸井に幸村は苦笑いを浮かべるしかない。

今から行くよ、と当たり障りない普通の返答を返す。

丸井はそんな答えに納得していないようだが、ふーんと不思議そうに言葉を濁した。

不意に、本当に唐突に丸井は幸村の目線の先を探すように辺りを見回す。

すでにそこに名字の姿はなかったが、背中を向けている女子たちの様子に何かが閃いたようにニヤリ、と口角を上げた。


「幸村君、誰か見てたんじゃねぇのかよぃ?」

「俺がそんなことしてるように見えるなら病院に行って来なよ、丸井」

「別に隠すことじゃねぇだろ?」


知られたくねぇの?
とあくまで純粋に聞いてくる丸井に幸村はどうしたものかと曖昧な笑みでごまかす。

結局、丸井は幸村に真相を聞くことは叶わなかった。
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