永遠の夢
□忘れてしまったはずだったのに
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――ザワザワ………
――ザワザワ………
「相変わらず、騒がしいな」
「そんなものだ。慣れれば気にならない」
静まることを知らない騒めきに不愉快そうに眉根を寄せる幸村。
横に佇んでいる柳はすました顔で答える。
柳を横目に幸村は慣れたくないな、といつまでも変わることのない雑音を耳にしながら呟いた。
* * *
限界だな。
そう感じた幸村はキョロキョロと柳の姿を探す。
あまりの多さに少し手間取ったが頭一つ分飛び出したその姿を見つけ、知らず知らずの内にはにかんだ。
柳に気分が優れないと告げ、騒がしい人込みの中をスルスルと迷うことなく抜け出す。
「ふぅ……」
早足に体育館から出るとため息をこぼす。
久々なせいか慣れない雰囲気に息苦しさと圧迫感を感じた。
生徒はもちろん、教師も今は体育館の中だ。
誰も居ないひっそりとした校内をゆっくりと歩き回る。
変わらない教室を覗き、
変わった背景に目を見張る。
騒がしい体育館に不快感を感じながら、
静まった廊下に清々しさを感じる。
日光に照らされた運動場を横目に流し、
日陰になった花壇の傍に腰を下ろす。
「ここは変わらないな」
幸村は上を見上げ、気持ちよさげに木漏れ日を見つめた。
さわさわ、とそよ風が木々の葉を揺らし、擦り合わせながら小さな音を鳴らせる。
自然の生み出す音に耳を傾け、ゆっくりと目蓋をおろす。
近くから香る甘い花の匂いに鼻を擽られながらちょうどいい温もりに眠気を誘われる。
「………ふぁあ………」
うつらうつらと舟を漕ぎ、しばらくすると幸村は静かに寝息をたてはじめていた。