永遠の夢

□愛と呼ぶならご自由に
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- 柳Side -


柳生と名字が付き合っているという噂が流れた。

デマだと誰も相手にしないような些細な噂だったが、俺はノートに噂を書き込みながら事実を聞くために教室をあとにした。


* * *

「――柳生、少し話がある。構わないだろうか?」

「えぇ、構いませんよ」


普段と何ら変わらない声音で柳生は本を閉じる。

噂を知らないわけではないだろう。

とすれば、


「誰かに聞かれたあとか」


もしくは聞かれることを予測していたがための余裕か。

小さく呟いた俺の声を拾ったのか柳生は苦笑いを浮かべて口を開いた。


「名字さんが、柳君ならば聞きに来だろうと……」

「なるほどな」


名字は頭が回るらしい。

学年で最下位を彷徨う知能だとは思えないな。

噂のことですよね。と言う柳生に頷き返し、俺は口を開いた。


「名字との噂はどこまでが事実だ」

「どこまでと言いますか……嘘はありません」

「嘘は、か……」


どこか引っ掛かる柳生の言い方に俺はノートに添えていた指をどけ、そこに綴った文字に目を落とす。

真新しいけれど水気はないインクに指を這わせ、口を閉ざした柳生を見やる。


「……名字はまだ学校には来ているのか」


一瞬、面を食らったように間抜けな声を洩らした後、眼鏡を直しながら首を捻る。


「おそらくは来ていると思いますが……最近は不定期に休んでいるようですので」

「そうか……すまない、時間をとらせたな」

「いえ」


困ったように苦い笑みを浮かべた柳生は閉じていた本を開きながら、思い出したように俺を見上げた。


「名字さんに会ったら、伝えて頂けませんか?」

「……?」


俺が頷くと同時に、柳生は嬉しそうに顔を綻ばせる。


「     」

「!!?」


柳生の言葉に思わず目を見開いた。

それでいいのかと確認をとれば小さく、けれども確かに頷いた。


「……伝えよう」


そう一言だけ返し、俺は柳生に背を向けた。

柳生の方から、少しだけ迷うような声が零れたが、俺は足を止めなかった。
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