永遠の夢

□あなたが愛しそうに呼ぶ名前
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部活生の盛んな事もあって、朝から生徒で賑わう道筋に、ぽつんと並ぶ小さな影。

一人はきっちりと着こなされた制服が性格を表している。

綺麗に伸びた背筋が素晴らしいな、と一度は目を引くが、その程度だ。

もう一人はよくあるだらけた格好と言えるだろう。

無造作に下に結ばれた髪はまばらに散らばり、統一感を見せない。

気だるそうに歪められた表情がいっそう二人の違いを際立たせていた。


「おはようございます。ほら、名字さんも声だして!」

「……はよーごさいますー……」


やる気のないだらけた声が響く。

異様に張り切った声の傍であるせいでよけいにだらしなく聞こえてしまう。

横を通っていく部活生はクスクスと笑いながら二人を横目に流していく。

かぁっと頬を染めた先輩らしき彼女は横に立つ名字の頭を軽く叩いた。


「ほら、笑われたでしょ!?」

「先輩が変に張り切るからでしょ」

「私のせいにしないの!」

「その言葉、そのままお返ししますよ」


くぁ、と生理的にでた欠伸を噛み締めながら、名字は目尻をこする。

どっちもどっちだと気付かないのか、と周りは思うが当の本人達はどうも気付かないらしい。

名字にとっては、どちらが笑われていても興味ないのだろう。

どうでもいいのが見て取れる。


「大体、もう時間すぎてるじゃぁないですか」

「真田君にちゃんと伝えないとダメでしょ?!」

「んな事しなくても伝わりますよ……」

「ダメ!」


頑として首を縦に振らない先輩に内心面倒だと呟きながら、そうですか、と素っ気なく返す。

段々と減っていく生徒を目で追いながら、遠目でもわかるその集団に、名字は思わず顔を顰めた。


「……先輩の目的、絶対こっちでしょ」

「な、ななな何言ってんのよ!!?!」

「チッ……」

「舌打ち!?」


横で泣きそうになっている先輩を無視し、名字は真田と柳生の姿を探す。

あの二人のどちらかが、帰っていくとはいえ姿を見れば一応来たのだと理解するだろう。

名字はじろじろと視線を動かすが、目的の人物の姿がない。


「……?」


首を傾げ、つい名前を呟いた。

いない人間に伝えられるはずもないと、名字は先輩の腕を突く。


「いないみたいだし、帰っていいですよね?」

「で、伝言頼もう?ね?!」

「……ガキですか、アンタ」


はぁ、と隠しもせずにため息をこぼせば、クスリ、と目の前から笑い声が聞こえた。
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