永遠の夢
□いつもと違うきみだったから
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登校する生徒達で賑わう正門の中央に、一際目立つ女子生徒が一人。
横を通り過ぎるものは二通りしかない。
畏縮するか、素通りするか。
そんな中をやたらと派手な格好をした女子生徒が空気を読まずに横を通り過ぎようとした。
――その時、
「キミ達、校則違反」
異様に冷めた声が苛つきを隠さずに告げる。
四五人を前によく言えるな、と遠巻きに見ていた野次馬の一人が呟いた。
またか、とため息を吐く者もいれば格好良い、と目を輝かせる者もいる。
ヒソヒソと噂話や陰口に花を咲かせる生徒達を横目に、僅かに下がった眼鏡を上げる。
その動作さえもどこか恐ろしげで、キリッと吊り上がった目は眼鏡越しだと言のに威圧を感じさせる。
さり気なく組まれた腕にトントンと短いリズムを刻みながら指先を揺らす。
達筆な文字で風紀と記されている腕章が彼女の役職をすべて簡潔に表わしていた。
「許されるのはスカート膝上3pまで。それ、5pはあるよね?キミの醜い足なんか見たくないんだよね。……しまってくれる?」
「なっ……はぁっ!?」
風にスカート裾を揺らしながら言う彼女に、反抗的な目を向ける女子生徒達。
「うっざぁ〜……アンタよりマシじゃん。なに、嫉妬してんのぉ?」
「あはは、ウケるぅ」
髪を指先で弄びながら、一人が勝ち誇ったような眼差しで下から見上げる。
濃い化粧は見苦しく、汚らしい。
学生のするようなモノではないソレに、小さくため息を吐く。
「―――わかった」
「………!」
勝った!
勝ち誇った顔をしながら再び歩もうとしたリーダー顔の女子生徒の腕を、掴む。
「―――、は……?」
「よぉくわかったよ。キミ達には優しく諭してやる必要はないってことがね」
「ヒィッ!」
引きつった声を上げながら、後退ろうとする少女の髪を掴む。
ブチッ、と音を立てて数本が抜けたが、そんな事に手を止めるほど、彼女は優しくない。
「風紀委員会、なめんなよ。ブス」
ニヤリと口角が上がった瞬間、少女の体は宙に舞い上がりまるでスローモーションのように綺麗な曲線を描きながら荒々しく地面に叩き落とされた。
骨の軋む音と、濁音の混じった悲鳴は聞き耳をたてていた野次馬にはひどく生々しく、耳から離れそうもない。
やたらとこびり付くその音に数人は顔を青ざめさせ、怯えたように目線をそらし教室に駆け込んでいく。