永遠の夢
□きみは誰かの笑顔のために(、僕はきみの笑顔のために)
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私の独り言、聞いてくれる?
そう言った名字は真剣そうな、けれでも一人を不安がる子供のように丸井を見つめる。
「しかたねぇ。聞いてやるから話してくれよ」
「うん」
ありがとう。
今にも泣きだしそうな笑みが、丸井の感情を掻き立てる。
名字は少し思い出すように目を伏せ、優しく、愛しげに微笑んだ。
「……私さ、前に幸村と付き合ってたんだ」
「はっ!?」
一言目からの爆弾発言に目を丸くし、丸井はぱくぱくと口を開けたり閉じたりしながら恐る恐るといった様子でマジで?と呟いた。
オーバーリアクションにもとれる反応だが、名字は驚くよね。と苦笑いを零した。
「ずっと幸村のこと好きだったんだ。あんな優しい人が彼氏だったら、きっと幸せだろうなって」
「……」
うっすらと頬を染め、恥ずかしそうに言葉を選ぶ姿は丸井にとって無縁そうな保護欲を引き出す。
ぽつりぽつりと話す名字の声を聞けば、わかる。
名字は幸村を、今でも心のどこかで好きなんだと。
理解していた。
覚悟も、した気でいた。
だが、実際に名字の口から聞けば自分の覚悟がどれほどに甘く、緩かったのかを思い知る。
今すぐにでも聞きたくないと、もぅ話すなと言えれば、どれだけ楽か。
今更なことを思いながらも、ここで逃げ出すのは丸井のプライドが許さない。
丸井はそっと名字を盗み見た。
指先で草を弄びながら、嘲笑気味に表情を歪める。
「でもさ、実際に近くにいて思ったの。幸村には、私なんて要らないんじゃないかって」
「そんなこと……」
「うん。わからないよね」
名字は丸井の言葉を遮り、尚も続ける。
「でも、それはきっとお互い様だったの」