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□gray zone
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少し出かけてくるというマスターを見送ってから数分後、まだ男は軽口をたたいていた。
「しかしハニー、あのまま僕を置いていってその先を楽しんできてもよかったんだよ」
「私が”浮気”なんてすると思っているの、ダーリン」
おそらく、この男は昨日の糖度MAXの会話にあてられているのだ。女はそう思うことにして、男に合わせて別の話題をふる。
「『私と仕事、どっちが大事なの』」
「そんなことを聞くほど僕が大事なのかい、ハニー?」
「永遠の謎に対するダーリンの見解を聞かせてほしいの」
男に合わせてやれば、男は少し真剣な声となったと言いたいところであるが、少し声が柔らかくなっただけだった。
「それは永遠の謎にしておくべきじゃないか、ハニー」
「あら、実は仕事が大事だから私に答えられないんじゃないの、ダーリン」
「あはは、ハニーには何でもお見通しだね」
男は少し間をおいた。どうふざけて答えようか考えているのかもしれない。
女にとっては男が黙ってくれるのはこの上なく望みに近いことだったので、そのまま男のペースに任せた。
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