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「また今度ね、ハニー」


 ここが日本であることを疑うような台詞でも、世界を相手に会社を経営する男であれば不釣り合いでもない。


「待ってるわ、ダーリン」


 糖度MAXの会話を聞き流して、女はわざとピンヒールをふらふら揺らす。

 この役をできるほど女は自分は美女であると女は自負していないが、暗闇では関係ない。胸も多少あるし、高い声も出せる。必要なものはそれだけだ。


 その条件を十分に変えるのは、言葉に限らず相手を惑わせる技術と経験のみ。


 そのまま女は、ターゲットの近くのスキンヘッドの肌の色の濃い男のガードマンの近くによろよろと近づく。


「近づくな」


 ガードマンの制止がかかると、女はさらにふらふらと左右に揺れながら歩く。経験者しか分からないが、実はこの歩き方は転ばないのがなかなか難しい。


「ハーイ、お嬢さん。ずいぶん酔っているねぇ」


 女の予想と計算通り、ターゲットは引っかかった。



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