short2

□その眼差しの意味を未だに僕らは知らない
2ページ/6ページ



 私と少年は、この川の畔で出会った。といっても、そんなに昔のことではない。

 しかし時は関係なく、少年は出会った瞬間に私の頭をこうしてなでてくれたし、私はそれに逆らわなかった。

 それから河原を走り回ったり、夏であれば川に入って水を掛け合う。

 毎日会うこともなければ、数日の間会わない期間が続くこともない。

 私と少年はそんな関係だった。


 少年は、おそらくまだ10歳にも満たないだろう。言葉通り純真無垢な笑顔が眩しい。笑うと小さな笑窪ができる。私はそれがお気に入りだった。

 対する少年は、私のいつも真っ白でやわかな毛並みを気に入っている。私のことを出会った時から好いてくれて、大事にしてくれる。

 少年は私を人なつっこくて優しい犬だと思っている。


 しかし、少年は1つ、間違っている。


 私は、犬ではない。




次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ