short2
□真実を探す男
2ページ/9ページ
「……それで、どこまで行く気なんだ」
私が歩いていると、後ろから無表情な声が聞こえた。
「えっ?」
いつの間にか私の手を引いていた彼は、後ろで私に手を引かれている。
「どこまで行くのかと聞いたんだ」
「私の真実がある場所まで」
「どこまで歩いても同じ場所しか見えないんだが」
それもそのはず。私の世界はずっとピンク色のお花畑で占められているのだから。
「その服で居づらいなら、ピンク色の服でも着る?」
「先を急いでいるのだが」
彼はそれだけ言って、言葉を口に出すことを止めた。この無愛想はしゃべる言葉も最小限に抑えたいらしい。
だから私も最小限で答える。
「知ってるわ」
「君も急いでくれと言わなければ理解してもらえないのか?」
「あなたが急いでいるのと、私が急がなければならないのは別でしょ。私に急いでほしいというのはあなたの希望にすぎないわ」
「どちらも俺の希望に変わりはない」
「後者は私の希望と重ならなければ達成されることはないわ」
「君は俺のために動いてくれてるんじゃないのか?」
私の足が急に前へ進めなくなった。どうやら彼には、もっと真実が必要らしい。
「あなたが探している真実は目に見えるものなの?」
「……分からない」
彼が探しているものを口にすると、彼は元の寡黙な男に戻った。私は前に進めるようになったので、また前に進み始めた。
「しかし、どこにでもあるはずのものだ」
黙ったていたと思っていた後ろから声が聞こえた。
「じゃあ、あなたが見つけられないだけでここにもあるのよ」
「君は知っているのか?」
「私が知っている真実は1つしかないわ」
「そうだったな」
その声が何かやわらかみを持っていて、私はその理由を知ろうとしたが、男は元の無愛想に戻ってしまった。
.