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□ハッピークリスマス
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「メリークリスマス!」
今年もイルミネーションの下でそんな声が聞こえる季節になった。
今日はキリストさんっていうものすごく偉い人の誕生日なんだってさ。だからみんなその人のお祝いをするんだ。
同じ誕生日でもわたしのお祝いなんてしてくれない。最近では忘れられたら悲しいから、友達にもわたしの誕生日を言わなくなった。
少し前は自分の誕生日をお祝いしてもらえなかったことが嫌だったけれど……。
パーティしたりとか楽しいことがたくさんあるのに変わりはないから、もうそんなことを気にしないことにした。
サンタさんに『もう1つプレゼントちょうだい』なんて言えないし。20歳になったらプレゼントなんてもらえないかもしれない。
そんな不安をふりきって、わたしは自転車をこぎ続けた。
今日は友達とクリスマスパーティをする。今年もまたクリスマスパーティをできることももちろん嬉しい。
だけれどそれよりも、去年クリスマスパーティをやった時にまたやろうっていう約束をみんな覚えててくれて、約束を守ってくれるのが嬉しい。
「メリークリスマス!!」
わたしは自転車から降りる時間も惜しんで、友達の家に着くなり叫んだ。
「ハッピークリスマス!!早かったね」
友達が出迎えてくれたけれど……。
「クリスマスの時のあいさつって、『メリークリスマス』じゃなかったけ?」
「今年から違うの。なんでかっていうとね……」
「ちょうど準備できたから入って!」
わたしと話していた友達の言葉を遮って、遠くから別の友達の声が聞こえた。
「うん!」
『ハッピークリスマスっていうのが今年から』っていうのが気になったけれど、友達に腕をひっぱられたからあわてて自転車を止めて中に入った。
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