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□北風と太陽
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「やあ、ノースウィンド君」
ノースウィンドと呼ばれた青年は、しかめ面のままシャインに答えた。
彼は流れ者で名もなかったが、その冷たい態度と仏頂面から北風と呼ばれていた。
「……何の用だ?今はパレード中だろ」
ノースウィンドはシャインがこちらにやって来たのを見て、さらに表情を険しくした。
「『北風と太陽』という異国の童話を知っているかい?」
シャインはそんなノースウィンドの反応を気にせず、明るく聞いた。
周りの人々は、ざわめくだけでは飽き足らず、シャインとノースウィンドの周りに円のような形を作りはじめている。
「何で今、そんな話をするんだ?」
そんな人々の様子に気づいたノースウィンドは、さらにそっけない態度をとった。
「今がその童話の状況に似ているからだよ」
シャインは嫌味なほどニッコリ笑って言った。
「愛想のいい僕は、庶民なのに誰もが憧れる美しい王女様と結婚する。そしてボヤージュ国の王子になる。それに比べて無愛想な君は……。言うのもかわいそうだから止めておこう」
シャインがそう言うと、周りの人々が渇いた笑い声を上げた。
その様子を見て、ノースウィンドは吐き捨てるように言った。
「愛想で王子になれるなんて安い国だな」
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