□裏の裏の僕達
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時間軸のない電脳世界
僕達はそこで生まれた。



僕達を生み出したマスターは天才と称される人間だった。
そして彼は極度のオタクだった。

そんななか僕達が生まれた







それはあいつの一言から始まった僕らの人生。

『マスター、ミク家族がほしい!!』


そして僕達は心をもらった。
でも、マスターは僕達を見てくれはしなかった。




たった1人しかマスターは愛さなかった。








「マスターマスター起きて起きてー!!」


「ミクたぁん!!僕の胸の中に飛び込んでミクたんの匂いハアハアさせてぇぇぇえ!!」


「うざい変態!!」




マスターはミクにだけ生身の体を与えていた。
僕達には心だけをあたえて。

マスターは僕達の存在を無視した。






画面越しの二人の会話
毎朝毎朝繰り返される話はこんなのばっかりだ。


初音ミク、マスターの愛を1人で受けている僕達の姉。

それを見て僕達家族は羨ましがるもの、苛立つもの、泣きそうになるもの、関係ないと見ていないもの。



僕達は関係ないと見ていないものの部類だった。








他の家族はたった1人だから家族の絶対であるマスターに振り向いてほしかったんだと思う。

でも僕は違う。
リンさえいればいい。

だからマスターはどうでもいいとおもっていた。







リンさえいればいい。ただそれだけ。
リンがいなくなるなんて。考えたこともなかった。







ある日、事件が起きた。
バグに犯された。



あのとき、僕は自分の体が焼けていくのを見て怖くて、

なにがこわいかというとリンがこうやって消えていくことを考えたからだ。

バグからリンは盾になり僕を庇ってくれた。
怖かった。リンが、消えていった。



そのあと、どうでも良くなった僕はバグに食らいつかれた。


すべて、飲み込まれた。








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