逃走物語り。

□参 夜
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何事もなく過ぎたスクールライフ。

これほどゆっくり出来たのは、久し振りだった。





にも関わらず、ハイテンションはやって来る。

校内は静かに過ごしていたのに、何故放課後になって元気になるのか。


「これから冒険に行くぞ!さぁまゆ!!」

「ねぇ、どうにかならない?そのテンション」


うんざりしながらあかねを冷たい目で見る。

隣には、例の如く未来もいた。


「まゆ先輩!行きますですよ!!」

「そうだ、その息だ未来ちゃん!!行くぞっ」


おーっ!!と、大声で、しかも外で、公共の場で叫ぶ。
高校生にもなって、恥ずかしくないのかと問いたい。

周りの園児や親たちの視線が痛い。

今すぐこの場を去りたい。
一刻も早く彼女たちから離れたい。

そう思うのも無理はなかった。







学校からすぐの、小さな公園でまゆたちは集まった。

夕方の時間帯だからだろうか。

まだ人も多く、犬の散歩をしている人がちらほらいる。


ブランコを占領するかのように、三人揃ってブランコをこいでいた。


そして冒頭にいたる。


「もう嫌だ、恥ずかしい。誰か止めて」

「何を馬鹿な。ノンストップだ」


馬鹿なのは貴女の頭です。


その場にいた人間が、誰もが思ったことだろう。


関わりたくないとでも言うように、親たちは子を連れて早々と立ち去る。

犬を連れた人も、皆避けるように通り過ぎていった。

それを見たまゆは、こいでいたブランコから飛び降り、あかねの前に立った。

彼女もまた、こいでいたブランコを止め、まゆの言葉を待った。

未来もブランコから降りはしなかったが、耳を傾けている。





「この中で誰が一番苦労してると思う?私だよ」


そんな馬鹿な。

そんな顔をしたあかねを、まゆは容赦なく蹴り落とした。

未来も蹴り落としてやろうと思ったが、さすがに後輩には手を出さなかったらしい。


「…で?冒険というのは如何なるもので?」


眉間に皺を寄せながら、如何にも不機嫌、といった雰囲気を出していた。

完全にビビっていた未来だが、咳払いでそれを誤魔化した。


「あ、はい。…これ、見てください」


鞄から取り出したパソコンを、まゆに向けて説明を始める。


そんなことより、気になったのは未来の鞄の中身だ。

パソコンを取り出したことで、鞄が空になったのだ。
筆記用具など、微塵も入っていなかった。


「先輩たちが集めた情報と、僕のデータを組み合わせて…」


そう言って、カチとキーを押した。

出てきた真っ白な画面に、ズラッと並んだ文字。
よく見れば、年代順に並んでいる。
ニュースで放送された日付なんかも、細かく書いてある。


「それで、これをどうするの?」

「そこから導き出せる犯人像を、今からやるんだよ!」


いつの間にか復活したあかねが、キラキラの笑顔でそう言ってきた。


未来を見れば、同じくキラキラの笑顔でまゆを見つめてる。



仕方ないな、といったため息を洩らし、目の前の文字に目を通していった。




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