第一弾<book>
□ばら【あまき様】
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頬を伝う生温い感触。
さっき受けた攻撃で頭部を切ったのか。
けれど痛みは感じなかった。
というより体中が悲鳴を上げていてただただ熱い。
それでも何とか残る力を振り絞って立ち上がった。
その瞬間にもう何度目かわからない攻撃を受けて呆気なく地面に崩れ落ちる。
(──っ誰か・・・・・・)
カツンカツンという靴音が近付き、同時に最悪の状況を悟る。
咄嗟に心の中で助けを求め、そんな自分に嫌悪した。
フェアリーテイルの一員。
そう思うたびにくすぐったくて嬉しくて誇らしかった。
それなのに自分は弱い。
弱くて、仲間を助けられない。
結局は誰かの足枷になる。
いつだってそんな自分が歯痒くて大嫌いだったのに。
もしかしたら私は必要ないのかもしれない。
あの優しくて強いギルドには。
(それでも、)
「ルーシィ!!!」
次の瞬間、空気が凍った。
氷の刃が敵を貫く。
それこそ一瞬で、今自分を殺そうとしていた敵は吸いこまれるように地面に倒れた。
「おいっ、大丈夫か?!」
(グレイ・・・)
「ルーシィ!」
心配そうに自分を覗き込む。
これ以上は心配をかけられなくて何とか笑った。
「ありがと・・・グレイ」
「随分やられたな。立てるか?」
「・・・ちょっと、無理かも」
「じゃあおぶってくか・・・ルーシィ・・・?」
グレイに凝視され、やっと自分が泣いてることに気付いた。
だらしなく涙が耳元へと流れる。
「痛いか?」
グレイが再び体をルーシィに向けた。
「ごめ・・・っ、ごめん・・・──っ」
立てないことも泣くことも弱いことも心配かけることも全部。
私なんかがここにいちゃいけないのかもしれない。
「謝ることじゃねェだろ。な?」
頭を撫でてくれる手がたまらなく優しい。
その温もりに涙は加速した。
「私・・・っ・・・」
「ルーシィ」
グレイの手が頭から頬へと滑り落ちた。
「無事でよかった」
その手が少し震えているような気がした。
伏せた瞳からは何も感情を読み取れない。
「何度だって助けにくるから、生きててくれよな。」
「グレイ・・・」
それでも、この人達の手を離したくないと思う。
何よりも、大切だと。
「うんっ・・・」
ごく純粋な侵略者でもって僕の平静は終わる