第一弾<book>

□ひまわり【あまき様】
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ぺらぺらぺらぺらよくしゃべる奴。
張り付いたような笑みを浮かべ、どうでもいいことばかりを延々と話し続けるルーシィを眺めながら思う。
別に怒っているわけではないのだ。
そう自分に言い聞かす。
それでも表情は自然と胸の内を表していたようで。


「・・・・・・聞いてる?グレイ」


気付けば剝れ顔のルーシィが机をパンパン叩きながら遺憾の意を表していた。


「へーへー聞いてますよ」

「何よそのテキトーな返事!」

「えー、一昨日の夕飯が何だって?」

「そんなのとっくの昔に終わった話題!今はこの本の主人公のことで、」


バッと本をかざして勢いよく前に出たかと思うと次の瞬間スッとその手を下ろした。


「もういい」

「・・・んーだそれ」

「グレイに知的溢れる文学の話をしてた私がバカだった」


怒ったのかと思いきや項垂れるようにそう言う。
そして挙句の果てに笑った。


「ごめんね!」


なぁんか誰かに話したい気分だったのよ。
グレイもそんな気持ちになることない?あ、ないか。
こんな話されてもつまんないってね。


「ムカつく」


ペタリとひっついた笑顔で重さのない言葉。
軽く軽く宙をフワフワ漂うだけの台詞。


「な、何がっ、」

「別に何も聞かねーよ」


そうだ、その権利はない、今はまだ。


「けどなぁ、」


立ち上がってルーシィの左手から本を引っこ抜いた。


「その顔は止めろ」

「ど、どの顔よ。生憎生まれた時からこの顔よ」


憎まれ口を叩くルーシィの頬を思いっきり引っ張ってやった。


「いっ、いたっ、いっ、たた・・・っ」


そうすると見る見るうちに溢れ出てくる涙。
それを確認してグレイは頬から手を離し、次にルーシィの頭にもっていった。


「しばらくそうしてろ」

「・・・・・・デリカシーゼロ」

「何とでも」

「変態」

「それはやめろ」


そういやルーシィってあんま泣かねぇな。
撫でる手を止めずにそんなことを考える。
ルーシィの肩は小刻みに震えいつもよりずっとか弱く見えた。
一瞬その体を抱きしめたいと思うけど、やっぱり止めておく。
自分はまだそれができる立場ではないと思うから。
勿論、涙の理由を聞くなんてもってのほか。


「つまんねー意地張るんじゃねェよ」


仲間だろ、と続ける。
今はそれで十分だ。
束の間でも吐き出せたらそれで少しは楽になる。
いつか、いつか俺だけに聞かせてくれたらいい。
そんなことをそっと願ったりした。




ブルーライト・ブルー

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