第一弾<book>

□おしろいばな【あまき様】
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暖かくて気持ちの良い午後。
ルーシィはコトンという遠慮がちな音にハッと顔を上げた。


「あ、邪魔してごめん」


レビィが手を合わせて申し訳なさそうに言う。
どうやらこの紅茶はレビィが用意してくれたようだ。


「ありがと、レビィ」

「どういたしまして。それにしてもルーちゃんすごい集中力だねぇ」


昨日買った新刊に栞を挟んで脇に置く。
物語と現実の狭間にいるようで頭はぼんやりとしていた。


「何かいつのまにか人が少なくなってる?」

「みんな仕事行ったり出掛けちゃったよ。」


そういえば読み始めてから2時間弱経っている。
何となく取り残されたような寂しい気持ちになった。


「あぁ〜こんなことしてないで仕事しなくちゃ!家賃家賃」

「じゃああそこでルーちゃんと同じくで別世界に旅立ってる人を呼び戻しちゃえば?」


クスクス笑いながらレビィが隅を指を差す。
そちらを見やるとよくよく見知った背中があった。


「つーかなんで脱いでる?!」


規則正しく動く背中は気持ち良さそうに上下する。
顔はここから見えないがその姿勢は間違いなく惰眠を貪っているんだろう。


「あんな恰好で寝てたら風邪ひくね。」

「というかどういう流れで寝たのかしら、あれ。」


それでも良い鴨だ。
奴の強さなら一緒に仕事するパートナーとして申し分はない。
つまり家賃は間違いなくゲットできるってことだ。
ナツは昨日からマスターの指示で仕事に行ってるし、エルザもいないみたいだし。
ルーシィはグレイに近寄っていった。


「グレイ〜」


小声で名前を呼んでみる。
反応なし。
顔を覗き込むとまぁ緩みきった顔。
おもわず笑みが零れた。
そういえばグレイの寝顔なんてあまり見たことない。
ナツならそこいらで眠りこけてるんだけど。
するとむくむくと込み上げてくる悪戯心。


「ナツナツナツナツナツ」


小さい声でその名を連呼する。
するとグレイの顔はみるみるうちに険しいものに変わった。


「く・・・・そ、ほのお・・・・」

「ぷっ」


どうやらコイツの脳みそはすこぶる簡単な構造になっているらしい。
ルーシィは続いてエルザ、と呟いてみた。
瞬く間に悲痛な面持ち。


「うっ・・・いや・・・ごめ、」

「ジュビア」

「うぅうう・・・あぁ・・・」


グレイは唸りながら右手を前に伸ばした。
なぜ青くなる一体何をされている。
そこでふと思いついた。
例えば自分の名を聞いたらどうなるんだろうという疑問。
好奇心はうずうずと収まりそうもない。
小馬鹿にした笑みか、呆れ顔か。
まぁ嫌われてることはないと思うけどたぶんおそらくいや、まさか。


「ルーシィ」


恐る恐る自分の名を口にしてみた。
グレイの顔は苦悶の表情から一変する。


「──え、」


笑った。
なんかすごい優しく顔で笑った。
ぼっと瞬時に熱が顔に集まる。
えぇぇぇええっっ!!なんでこれ反則!いやでもたまたまかもしれないし、偶然かもしれないし!!
思いなおしてジッとその寝顔を見つめる。


「・・・ナツ」


やっぱり眉間に皺。
じゃあつまりもしかして。


「ルー「ルーちゃん、グレイ起きない?」

「れれれれレビィ!!!」

「どうしたの?」

「いやあははははは」

「?、グレイ〜起きて〜」


レビィに揺さぶられグレイが眠気眼で目を覚ます。


「ルーちゃんから御指名だよ」

「あぁ?あーもうこんな時間か」


ポリポリと頭を掻きながら時計を見る。
そして次いでレビィ、ルーシィへと視線を向けた。


「今月も家賃ヤバいのか?」

「さすがチームメイト、話が早いね、ルーちゃん」

「──えっ、そそそうね!ほんとそうっ!!そうと決まれば行っくぞー待ってろ仕事!あははは」

「・・・ルーシィ風邪か?」

「顔赤いね」


そうだといいな

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