さぁさ

□言うつもり、なかったのに。
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それは、ちょっとしたこと。



ただ単に、ルーシィがポロリと言ってしまっただけ。


好き、なんて言うつもり、なかったのだ。


でも、言ってしまった。
この状況が、言わせた。





それは、数時間前のこと。


いつもの最強チームで、仕事をしていた。

すると、ナツが


「ニオイがする! 行くぞハッピー!」
「あいさー!」


と言い、ハッピーとともに、走りだし、


「私も追う!」


と、エルザまで走り出した。



すると必然的にルーシィとグレイは2人きりになる。

でも、こういうことは今までに何度もあるので、どうってこもない。



ーーハズだった。



その日の仕事は、怪盗ナンダの捕獲という簡単な内容だった。
しかしナンダはルーシィ達の事に気づき、所々に罠を仕掛けたのだ。


「ルーシィ!」
「え?」


ズコーン!


刹那、ルーシィの前に大槍が刺さった。

もし、グレイが呼び止めなければ、ルーシィに確実に当たっていた。

そのことを考え、サァーッと冷や汗をかくルーシィ。


「あ、ありがとう」


ルーシィが礼を言うと、グレイは少し不思議そうな顔をする。


「な、何よ?」
「いや、ルーシィが素直なんて珍しいな、と」
「どーせあたしは素直じゃないですよ!」


ぷいと、拗ねたようにそっぽを向く。

そして向いた瞬間、ルーシィは後悔した。


ホント……素直じゃない……。


もう、何でいつもこんな可愛くない態度をとってしまうんだろう。



こんなにも、好きなのに……。



「ーーィ! ルーシィ!」
「ふぇっ!?」
「なーにぼーっとしてんだよ」


クスクス笑いながら、ポンポンとルーシィの頭を撫でるグレイ。


ーー好き。


笑った顔も、頭を撫でてくれる手も。



いつからだろうか。

グレイを好きになったのは。



気づけば目で追っていて。
その瞳に映るのは、ルーシィだけでいてほしいと願って。


隣にずっと、いたいと思って。


でも、わかっていた。

グレイには、彼女……ジュビアの存在があることを。


ジュビアはルーシィが自分の気持ちに気づくずっと前に、グレイのことを好きになっていて。

ずっと、グレイにアプローチをして。

いつも、グレイのことだけを思っていて。


ーー叶うわけがないーー


ルーシィはそう思った。


彼女に勝てる自信がなかった。

だから、この想いは、封印しよう。


人知れずそう決め、グレイとは仲間という関係のままでいようとした。



けど、日に日に想いは大きくなるばかり。






ーーもう、限界だった。






「好き……」



 
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