あまき
□星を食べたくて
1ページ/1ページ
あ、流れ星。
満点の星空を見上げながら胸の中で呟く。
本当だったら声を出して指を差して、そして顔を見て。
こんなにも綺麗な眺めなのにそれが叶わないなんておかしい。
とても不満だ。
そう思うけれどやたらとはしゃぐことが憚れる空気なのだ、今は。
ルーシィは数歩前をいく背中をジッと見つめた。
何が気に食わないのか不機嫌を隠そうとしない。
どうせナツやガジルとでも喧嘩したんだろうと気にも留めていなかったのに、ふいに声を掛けられとても驚いた。
そして思わず「うん」と言い追いかけていたのだ。
いつもどおり賑やかで騒がしい夜のギルドから抜け出すのは容易なことだった。
「すげぇ星」
ふとグレイが立ち止まった。
そして空を見上げる。
ゆっくりとその隣まで進み、同じように見上げた。
「明日も良い天気ね」
「だな」
「よかった。洗濯物溜まってるんだ」
「溜めんなよ」
「仕方ないでしょ。泊まりで仕事だったんだから」
だいたいそんなことグレイに言われたくない。
いつも裸でいるグレイと自分とでは洗濯する量が違うのだから。
そういったことを言ってやろうと星からグレイへと視線を向けた。
すると意外なことにグレイとばっちり目が合った。
あれ、どうして星を見ていたんじゃないの。
言おうとした言葉が詰まって、その瞬間にグレイはスッと視線を外した。
なんだか取り残されたような、奇妙な気分になる。
「で、話って何?」
とりなすように声を張った。
「ああ」
「ああじゃないわよ。わざわざこんなとこまで連れ出して、しょうもないことだったら、」
踏む(今日はなかなかに高いヒールだった)、と言いかけた時だった。
「好きだって言ったらどうする」
「は・・・」
あまりにも真剣な目と向き合ってしまい、言葉を忘れた。
頭が真っ白になる。
そして次の瞬間、心臓が馬鹿みたいに大きな音を奏で始めた。
「なっ、何の、冗談っ」
言うべきことが見付からない。
けれどグレイは好きだと言ったわけじゃない。
どうするかと問うてるのだ。
「わっ私も、って言ったら、どうする・・・?」
ずるい台詞だ。
でもお互い様でもある。
グレイがゆっくりと顔に向けて手を伸ばしてきた。
思わずビクリと体が跳ね、目を瞑る。
けれどいつまでたっても何の感触もなくて、ゆっくりと目を開けた。
グレイが私の髪を一束掬っていた。
「他のヤローには指一本触らせねぇ。絶対に、だ」
その髪に、グレイがゆっくりと唇を落とした。
「──っ!キ、気障っ!!」
「何がだ」
「誰にでもそういうことっ」
「言うか」
「〜〜踏ませてっ・・・!」
「何でだ」
どさくさに紛れて握った手を、ゆっくりとグレイが握り返してきた。
星を食べたくて