レイピア

□今より強い私であるために
1ページ/1ページ

「うわぁ・・・、いよいよ明日からか・・・。」
ルーシィは星を見上げながら、しみじみと言った。
冷たい夜風が、彼女の頬をなでる。空にはぽっかりと満月が浮かんでいる。
「お前、今日1日だけでそのセリフ何回言ったんだ?」
「・・・、30回くらい?」
「おいおい。」
真面目な顔で答えると、呆れるようにクスリと笑われた。
彼女の隣を歩く人物は、グレイ。ギルドのトップクラスの実力者であり、新米S級魔道士・・・。一年前、S魔道士昇格試験を突破した。
そして、ルーシィの恋人である。
「なによぅー。しょうがないじゃない。未だに信じらんないんだから。」
「けど事実だろ?もっと自信持てって。そんなんじゃ、受かるもんも受かんねーぞ。」
「だってさ・・。夢にも思わなっかたよ。」

私が、S級魔道士昇格試験の参加者に選ばれるなんて。

ポツリとつぶやくルーシィを、グレイは横目でちらりと見る。
彼女の表情は、不安とも、期待とも取れない、むしろ無表情に近いものだった。
グレイはふぅ、と溜息をつく。
「悪かったな。」
「え?何が?」
「試験。パートナーになってやれなくて。」
「あぁ、そんなこと。しょうがないじゃない。『S級魔道士はパートナーのできない』のが、ルールだからね。」
ルーシィは皮肉めいた、しかしどこか嬉しそうにニヤリと笑った。
「感謝してるよ、お前には。ありがとな。」
「トーゼン。私も感謝してるよ。」
楽しそうに笑うルーシィに、グレイは優しく微笑みかける。
「大丈夫だよ。去年の試験、お前が俺を合格させてくれたんだ。お前だって合格出来るって。」
「何言ってんの、グレイの実力でしょ。まぁ、あたしの運も役にたったかもしれないけど。」
「ただの運じゃなくて、悪運だろ。」
「その悪運に助けられたのは誰かしら?」
「俺だな。」
グレイがからかうように言えば、すぐさまルーシィが食いついてきた。そんなルーシィを、グレイは楽しそうに笑う。

ルーシィはぷぅ、と頬をふくらませると、グレイの腕にぎゅう、としがみついた。
「何だよ。今日は随分積極的なんだな。」
「なんとなくよ!!」
「そういえば、お前のパートナー誰なんだ?」
「ジュビア。」
「は?何で?」
「さぁ、なんか突然にね、『元恋敵、いえ、ルーシィ!ジュビア、あなたに協力します!パートナーになります。乙女の意地を見せましょう!』って。」
「なんだそりゃ。」
「さぁ、リオンとなんかあったんじゃない?」
不意にグレイは立ち止まり、ルーシィを引き寄せた。
「ぐ、グレイ?」
「・・あいつの名前言うんじゃねぇよ。」
ムスッと、浮かべた表情は、明らかに不機嫌そうなもので、ルーシィはクスリと笑う。
「ヤキモチ?」
「わりぃかよ。」
「悪くない!」
ルーシィは嬉しそうにぎゅ、と抱きつく。
グレイはルーシィの頭を優しく撫でた。
「合格しろよ。一緒に行けねぇけど。」
「うん。合格出来るって信じてる。信じて頑張る。」

グレイはもう一度、ルーシィを強く抱きしめると口付けた。

「俺も、信じてる。頑張れよ、ルーシィ。」

あなたは私のおかげで合格できたというけれど、あなたはまだまだ上に行ける。私はそう信じてる。だから私は、少しでもあなたに相応しくなれるように。胸をはって、あなたの隣に立てるように。未来まで、あなたと一緒にいたいから、今より、強くなる。
絶対に−−・・。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ