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□ツいてる日
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「ちょ……来ないでって!」

「ホァラー」


 ――スリッ――

「っ! キャァァァァ!」




 ――ガラッ――



「あ、見つけた」

「え?」




「こ、これ……越前君の家のネコ……なの?」


「そう」


「へ、へぇ……」



 土曜日の教室。私は昨日忘れていったノートを取りに来たところ、なぜか狸みたいねネコに遭遇した。

 普通の人なら別に『何でここにいるんだ?』程度だろうが、私は違う。私はネコが苦手なのだ。


「何、あんたネコ苦手なの?」

「ちょ、近づけないで!」

 越前君は『カルピン』と呼んでいるネコを、抱いて、私の前に立っている。


「可愛いじゃん、ネコ」

「そりゃ遠くから見てる分には可愛いけど! けど! 見るのとさわるのでは全然違うの!」


「そう?」

「そう!」

「ホァラー」

「ほら、可愛いじゃん。ねぇカルピン」

 いやいや!! ネコに話しかけてる君のほうが可愛いんだけど!?

 普段とあからさまに雰囲気違うし!



 今日はツいているのかツいていないのか分からない。

 今日、休日なのに越前君に会えた。すっごくツいてる。

 今日、大嫌いな猫が目の前にいる。すっごくツいていない。

 でも、猫が目の前にいるコトより越前君が目のいるほうがランク的に上だ。

 だから今日はツいているのかな。

「え、越前君は今日部活?」

「違うケド」

「じゃあ何で学校に……」

「カルピンが逃げたから」

「は、はぁ……」

 あぁ、もうちょっと可愛く喋れないのか私は。

「アンタは?」

「え?」

「アンタは何で学校にいんの?」

「昨日、学校にノート忘れていっちゃったから……」

「ふーん……。まだまだだね」

「う、うん……」



 あ、話し終わっちゃった。

 何が『うん』だよ! 返答に困るに決まってんじゃん! 私のバカバカ!


 せっかくの越前君と喋れる貴重な時間だったのに!




「………………ねぇ、今日なんか用事ある?」

「ほぇ?」

 思いもよらない質問にアホな声がでた。

「あんの?」

「な、な、な、ないよ!」

「ふーん……」


 …………え、それだけ!?




「……ならこれからどっか行かない?」

 え、え、え?

 ちょ、どっかって……どこ!? てかコレ、デートのお誘い!?

 ウソ!? 何!?

 今日すっごくツいてる!!


「嫌なの?」

「い、嫌じゃない!」

「あ、そ」

「えと……どっかって……どこ?」

「あー、最初俺の家」

「越前君の家!?」

「カルピン置いてこなきゃ」

「あ、う、うん……」




   
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