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□とろける味は……。
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「じゃ、コレ終わったら先生のトコに来いな」

 2人っきりの教室で隣の席に座り、目の前の何枚かのプリントの一枚に手をつけた。

「……全然分からん」

「俺もー」

「だよね!! こんなん分かるワケないよね!!」

「だよなー!」

 何故だか意気投合してしまう。

 だって分からないモノは分からないんだよ。

「でもま、やらなくちゃ」

「ぅげー」



 キュルルルッ……。

 ん?

「腹減ったー」

「あ、お腹の音か」

「コレいる?」

 バッグから取り出した板チョコを差し出す。

「いいの!?」

「いいよー」

「おー!! サンキュー!」

 ガツガツと食べはじめた。

 え? 私にくれないの? 普通ちょっとはくれるよね? ね?

 ジッと見ていると、その視線に気づいた切原君は最後のヒトカケラを食べるのをヤメる。

「ん? 食う?」

「食べる」


「えー? どうしよっかなー」

「えー? 頂戴よー!」

 ——パクツ——

「あー!」

 食べちゃった! 食べちゃったよこの人!!



 って思った瞬間、口の中が甘くなった。

 とろけるような、甘い、甘いチョコの味に。



「なっ……」

 またクチビルがつきそうな距離で、切原君はニヤッと笑う。

「美味し?」

「え、ちょ……?」

「ずっと好きだった。付き合って?」

「は、はい……」



☆終わり☆


 とろける味は……。

  (君と私で溶けたチョコの味)


 





  
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