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□2人の足音
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 俺は誰もいない静かな廊下を1人、ゆっくりと歩いていた。

「英ちゃーん!」


 廊下を右に曲がると、いきなり背中に抱きつかれる。

 俺はそれが誰だかすぐに分かった。この声はずっと昔から聞いている。その前に俺のことを『英ちゃん』と呼ぶのは知っている限り1人しかいない。

「##NAME1##? 何でここにいるの?」

 名前を言うと、梨子は背中から離れ、 俺の目の前に立ちはだかると下からジッと見てくる。

 ##NAME1##の背丈は俺の肩より下、胸より上くらいだ。女子の中でも少し小さいほう。

「その言い方ヒドイぞー、英ちゃんっ!」

 『英ちゃん』というところは強調してきた。

「英ちゃんって呼ぶにゃー!」


「いーやっ! 決めてるんだもん」

「にゃにを?」

「英ちゃんのこと、英二って呼ぶときを」

「あー! 今、英二って呼んだー!」


「え? あ! い、今ののーカウント!」

 俺が走り出すと、##NAME1##も走り出す。バタバタ、パタパタと、オレンジ色の静かな老化にバラバラの足音が響いた。

「はぁ、はぁ……。英ちゃん速すぎ!」

「##NAME1##が遅いだけだにゃー」

「私、走るのそんなに遅くないもん!」

 ##NAME1##子に会ったおかげで『教室』という目的地に早く着いた。俺は自分の机の中に入っている数学の教科書を出そうと手を入れる。しかし、何も感触がない。

「あれ?」

 腰を曲げ、机の中をのぞいた。空っぽだ。

「ねー##NAME1##、俺の数学の教科書知らにゃい? 忘れていったと思ったんだけど……」

 背筋を伸ばし、##NAME1##に目線を移した。

「ねー、何で私が廊下にいたと思う?」

「え?」

「ジャ、ジャジャーン!」

「##NAME1##は自分のかばんの中から2冊の数学の教科書を取り出した。

「あっ! それ、俺の教科書!?」

「答えは、英ちゃんの机の中にコレが入っていたから、取りに来ると予想したからです!」

「返せー!」

 机に右手を乗せ、それを軸にクルリと1回転。

 また、##NAME1##との追いかけっこが始まった。バタバタ、パタパタと、2人の足音がバラバラに教室に響く。

 今回は俺が鬼だからすぐに追いかけっこは終了。パッと莉子の手から教科書を1冊抜き取る。

「あははっ!」 

 ##NAME1##はまた走り出した。何故走り出したか疑問だったが、それはすぐに分かった。俺がもっていたのは##NAME1##の教科書。

「あー!」

「英ちゃんバカだー!」

「こらー!」



 ――ピョンッ!――





    
     
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