中編

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「…………………………」

「な! いいだろ!?」

「…………………………」

「さすがに侑士もだめって言うんだ!」

「…………………………」

「なぁー」

「……ぁ……」

「あ?」

「アホかぁ――――――――――!!」


「わ! 何だよいきなり!」

「こっちのセリフじゃぼけ!」


 今、この状況を説明しよう。

 事の起こりは3分ほど前。


 私はいつも通り歩きで家に帰った。が、家の前には向日君の姿があった。

「え? 何で、いるの?」

「いやーちょっとな」

「今日、部活ないの?」

「ああ、榊監督の用事で無くなった」

「ふーん……で? なんでいんの?」

「……今日な、家に帰ったら」

「うん」

「ケータイ床に落としちまってな」

「それで?」

「そしたら親がな、俺のお気に入りのストラップを踏んで壊したんだよ!」

「…………だから?」

「だから家出してきた」

「は?」

「でも、侑士も今月で8回目ともなると泊めてくれねぇんだよ」

「8回目?」

「おう、俺よく家出するんだよ」

「馬鹿じゃないの!? 今すぐ、家に帰んなさい!」

「やーだ!」

「だめ!」

「俺がいいっつってんだからいんだよ!」

「……はぁ、ところで何で私の家の前にいたの?」

「ああ! そうそう、今日から##NAME1##の家に泊めてくれ!」

「…………………………」

「な! いいだろ!?」

「…………………………」

「さすがに侑士もだめって言うんだ!」

「…………………………」

「なぁー」

「……ぁ……」

「あ?」

「アホかぁ――――――――――!!」


「わ! 何だよいきなり!」

「こっちのセリフじゃぼけ!」

 と、いうわけなのだ。

 いったい何考えてんだコイツ。

 私たちは男と女、しかもお年頃の!

「なに言ってんの!? だいたいなんで私があんたを泊めなくちゃいけないのよ!」

「だいじょうぶ、襲ったりしねーから」

「当たりまえだぁ――――――――――!!」



 ガチャリと玄関のドア開いた。開けた人物は私の母親。

「あら? 帰ってたの?」

「お母さん……」

「あ、##NAME1##のお母さん!」

「え?」

「俺、泊めてくれ!」

 はああああああああ!?

 ……お母さん、断るよね?

 てか断れ!

「か……」

 『か』?

 帰れって言うのね!

 さすがはお母さん!



「可愛い!」

「はあ!? ちょ、何言ってん!?」

「おばさん、だめか?」

「いいわよ! もちろん!」

「はああああああああああああ!?」

「よっしゃ! んじゃ、よろしくお願いします!」

「よろしくね、名前はなんていうのかしら?」

「向日岳人!」

「あらーじゃあ岳ちゃんでいいかしら?」

「ああ、いいぜ!」

 ちょちょちょちょちょ! お母さん、何考えてんの!?











「あ、ありえない。何で向日君が私の家に泊まるわけ?」

 自室のベッドに腰掛け、そう呟いた。すると、ドアがノックされる。

「入るぞ?」

 向日君だ。

「…………どうぞ」

「なんだよ、その『ウザイな』的な声」

 ドアが開いたそうそう、向日君の不満そうな顔が目に入る。

「その通りよ、なんで私の家に泊まるのよ!」

「パっと思いついたから?」

 あ、ちょっとイラっときた。

 うん。

 ……もうパシリとしてコキ使って使って使いまくってやるんだから!

「ふふふふ」

「何だよ、その不気味な笑いは……」

「向日君、私の宿題、やって」

「はあ? 自分でやれよ」

「文句あんのあかなぁ?」

 私は折れた左腕を右手で指差す。

「う、分かったよ」

「あ、それ終わったらこれもやってね、あ、あれもこれも……」

「ちょ、いくらなんでもありすぎだろ! てか、そんなに一気に覚えらんねーから!」

「しょうがないな、じゃあメモするから、それでいいよね?」

「だから、量が多す……ぎ……る」

 私がニコリと笑顔をふりまくと、向日君の声がどんどんしぼむ。

「え? 聞こえなかったなー、てか私の家にタダで泊まるんだからこれ位して当然だよね!」

「……なんかキャラ変わってねーか? 黒いオーラが出てる気がする」

「ん? なんか言ったかな? うんうん、そっかもっと増やしてほしいのね」

「わー! やるから! やるから! これ以上増やさないでくれ!」

「よろしい」


 
 

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