中編
□飛んだり跳ねたり!3
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「あ、そだ##NAME1##、ちょっと部室の中でまってろ」
「は? 何で?」
「送ってく」
「…………」
「な、なんだよその沈黙は」
「や、何突然言い出してんだろこいつ、って思って」
「ひっでー言い方だな、おい。でも、阿部って確か歩きだったよな?」
「そうだけど」
「俺、自転車だから乗せてく」
「倒れないでね? 力なさそうだし」
「##NAME1##が重くなかったら大丈夫」
「失礼!」
「##NAME1##だって失礼だろ!」
「パシリ君? 口答えするのかな?」
「う……」
「よし、部活にいってらしゃい!」
「……はい」
「##NAME1##、後ろに乗って」
「うん、お願いだから倒れないでね?」
「だから、大丈夫だから」
「本当に? 本当に大丈夫なんだね! 信じるよ!?」
「だーかーらー! 大丈夫だって!」
「ちょ、マジで怖い! 忍足君とかなら安心するんだけど……」
「何で、侑士なんだよ!」
「だってカッコイイじゃん! 向日君より背、高いし」
「身長関係ないだろ!」
「あるね!」
「あー! もー!」
「のわ!?」
向日君に持ち上げられ、自転車の後ろに乗っけられた。
「いくぞ! つかまってろよ!」
「え? え? え?」
……そういえば向日君て私のこと姫ダッコしたんだよね。やっぱりチビでも男だなー。
うん、……でもやっぱりチビだ……。
自転車の後ろに乗ったのはいいが、目の前はあのサラサラな髪の毛。
普通の男女の身長差があれば背中が来るはずなのだが、向日君の場合頭だ。
「なぁ、##NAME1##んちどこ?」
「えっと……この近くの公園分かる?」
「ああ」
「その公園をまっすぐいって右曲がったとこ」
「あ、俺の家と結構近いじゃん」
「そうなの? どこらへんなの?」
「##NAME1##の家、もうちょい行ったとこ」
「ふーん」
「##NAME1##、しっかり摑まっとけよ!」
「え?」
向日君に手をと引っ張られ、向日君の胸の辺りに手を置かせられた。
「え? な、何?」
「いっくぞー!」
「え、ま、まさか!?」
自転車の前は、もの凄く急で長い下り坂。
「その通り」
向日君がそう言うと、バっと音を立て自転車は中に浮いた。
「きゃぁ――――――――――!!」
「ひゃほぉーい!」
滞空時間はそれほど長くはないが、バンジージャンプした感覚だ。
ドン! と自転車は無事に地面に着いた。
「し、死ぬかと思った」
「あー! 楽しいぜ!」
「楽しくないわよ! なんでこんなのしなくちゃいけないのよ!」
「楽しいから!」
「どこがよ!」
「コレ、毎日やってるが飽きないぜ!」
「あんたの感覚どうかしてんじゃないの!?」
「ぅお!? ひっでー!」
「ひどいのはそっちよ! こっちはメチャクチャ怖かったんだからね!」
「あー、はいはい、すいませんでしたぁ」
「まったくよ!」
言い争いをしながらもやっと自分の家に到着。
「##NAME1##、じゃーな」
「うん、じゃあね」
あー疲れた! てかマジ怖かったんですけど!
さっきのジャンプが効いた。そんなことを思いながら家の中に入った。
「あら? ##NAME2##、お帰りなさい」
「あ、ただいま」
「遅かったわね、もうご飯出来てるから食べなさい」
「うん」
お風呂に入り、1日の疲れを落とし眠りに入った。
そして次の日――
「んー! 今日もいい天気!」
いつものように歩いて学校に向かう。今日は雲が少なく日差しが暖かい。
「あ! ##NAME1##!」
「え?」
そんなほのぼのとした気持ちを吹き飛ばされるように、後ろから自転車に乗った向日君が来た。それもすごいスピードで。
大きなブレーキ音を立て、私の横で止まる。
「ちょ、うるさいんだけどブレーキ音」
「悪い悪い」
「てか、何でそんなに急いでるの?」
「や、##NAME1##見つけたからさ、乗せていこうかな? って」
「や、結構。遠慮します」
「え、そこ普通喜ぶとろこじゃねぇの!?」
「だって昨日怖かったもん」
「昨日のはやらねぇって。だって下り坂ねぇじゃん」
「あ、確かに。んじゃ、お言葉に甘えて」