中編
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「侑士……侑士……!」
「ゴメン……っつ!」
##NAME2###は病室を抜けて走っていた。ただ、時折治ってない傷が痛んでいるようだ。
がたん、ごとん。
がたん、ごとん。
電車が一定のリズムを奏でながら走る。
(俺は……何しとるんやろう)
(##NAME2##真弓が忘れているのは仕方ないんやのに)
(……ホンマに俺はアホやな)
俺は電車に乗ってから、1つ、分かったたことがある。
『今の##NAME2##を本気で好きじゃない』、ということ。
(##NAME2##のことは好きや! でも……でも……)
(今までの##NAME2##を忘れるなんて無理や……)
(だってせやろ? もう今まで##NAME2##には記憶がない)
(だったら今までの##NAME2##のことを忘れて、今の##NAME2##を受け入れて好きにならなあかん……)
(でも! 俺には無理やそんなこと!)
(俺は……俺がホンマに好きなのは……)
(今の##NAME2##ちゃうんや……)
(今までの――##NAME2##なんや……)
(何で今まで気づかんかったんやろ。不自然で当たり前やのに。何か足りんくて当たり前やったのに……)
「は、は……」
##NAME2##が着いたところは――駅。
「侑、士……」
そして##NAME2##はあるところに行く電車に乗った。
「着いたな……」
電車からゆっくりと降りた。
そして――
「夕日は……まだやな」
そう、俺が来た場所は、夕日がきれいに見える丘。
「…………俺は何1人できてんのや。##NAME2##と2人で来なきゃ意味あらへんのに……」
「でも……今の##NAME2##と来ても意味……あらへんかったよな」
それからそこでずっとボーっとしていた。
「侑士!」
俺の名前を呼ばれ後ろを振り向く、俺の名前を呼んだのは――
「##NAME2##!? なんでここに……」
「ゴメン……ごめんね侑士」
「何がや?」
俺はそこで1つ気がついた。##NAME2##の左手の薬指に俺のあげた指輪があったこと。
「##NAME2##? その指輪……」
「うん……うん……ごめん。忘れてて本当にごめん……」
「え……?」
(忘れて『て』?)
「私、思い出したよ……」
「ホンマ? ……ホンマ?」
「うん……向日君にここの写真見せてもらって」
(岳人のこと『向日さん』じゃなくて『向日君』言っとる……)
(ホンマなんか?)
「ごめん。ごめんね……」
「##NAME2##……。ホンマなんやな! ホンマに思い出したんやな!」
「よか――った……」
涙が落ちる。
悲しみの涙じゃなく。
嬉しい涙が。
「侑士!?」
「よかった。――よかったわ」
##NAME2##の腕をつかみ俺の腕の中におさめる。
「ゆ、侑士!?」
「##NAME2##……##NAME2##……!」
「侑士……」
「愛してる! ホンマに……愛してる」
「侑士、私も愛してるよ」
「忘れててごめんね」
「思い出してくれたんや。それだけで十分や」
「ありがとう」
「ああ」
俺たちは夕日に包まれながら2回目のキスをした。
fin
終わり