中編
□5
1ページ/1ページ
##NAME2##と付き合い始めてから3日目。
「『あーん』して食わしてや」
「んじゃ『あーん』」
今日も##NAME2##のお見舞いに来ていた。今日は祝日で今は12時だ。
「ん、##NAME2##が食わしてくれると100倍おいしいわ」
「ふふ、ありがとう」
「…………」
(前の##NAME2##だったら『私にも食べさせてー』とか言うたやろな……)
(って、何思ってるんや! ##NAME2##は##NAME2##やないか!)
「どうしたの?」
「え、いや」
(確かに行動とか仕草は同じなんやけど……)
(何かちがうんや……何かが足りんのや……)
「……##NAME2##、『あーん』」
「え!? 私はいいよ!」
「『あーん』」
「……」
食べてくれた。
「どや?」
「おいしい」
「そうやろ!? やっぱ飯は『愛の力』でウマなるんや!」
「『愛の力』って……もう」
(……前の##NAME2##やったら「そうだよね!はい『あーん』! さっきより愛をこめてるからもっとおいしいはずだよ!」とか、言うてたやろな)
「侑士?」
「え? あ、気にせんといて」
「?」
ガチャ。
「よ! ##NAME1##! きたぜ!」
「あ、向日さん」
「今日、トランプもってきたんだぜ!」
「トランプ?」
「あれ? トランプ、覚えてないの?」
「あ、うん、ゴメン」
「いーっていーって!」
(トランプか)
半年ほど前、俺たちテニス部は合宿に行くことになった。
――今はバスの中。
「ゆーし! 見てみて! トランプ持ってきたんだよ!」
「お、えらいえらい! 何やるんや?」
「やっぱババ抜きとか?」
「お、いいな」
「何なに!? トランプ!? 俺もやるCー!」
「あ、俺もまぜろよ!」
「いーよ、てか皆でやろうよ!」
「それもいな、跡部! いいやろ?」
「あーん? トランプだぁ? ダメだ」
「何でや?」
「いーじゃん! いじゃーん!ね、跡部!」
「あ、おい、引っ張るんじゃねぇよ」
なんやこんやで、今、俺がマジックをやっている。
「はい、この中から好きなトランプ選んでや、##NAME2##」
「うーん、じゃあこれ!」
「よし、じゃあ俺に見せんように見ろや」
「うん」
「覚えたか?」
「覚えたよ」
「じゃあこのトランプの中に入れてや」
シュッシュっとトランプをきり、そして1度はこの中に入れる。
「##NAME2##、この箱からトランプ出してみ」
「うん」
「どや? 自分の選んだカード、あったか?」
「えと、ない!」
「そうやろな」
「何で!?」
「それは……」
スッと、俺は手を開く。そこには1枚の折られているカード。
「あ! 何でそこに!?」
「ふっふーん、すごいやろ! ついでにそれであったとるか確認してな」
「うん。あ、これ……」
ゴソゴソと開いたトランプの中には――指輪。
「俺からのプレゼントや! いっつも肌身離さずすけててや!」
「うん! 嬉しい! ありがとぅ!」
「ね……左手の薬指にはめていい?」
「もちろんや! 願ったりかなったり!」
「ほぅ。クサイことやるな忍足」
「アホ! 跡部、お前に言われたないわ」
「あーん? なんだと?」
(こんなことあったな。本当にいつもつけててくれたよな……。でも、今は……)
今、##NAME2##の左の薬指には俺のあげた指輪はない。
「##NAME2##」
「何? 侑士」
「##NAME2##って何もつけてないよな」
「つけてない? アクセサリーとか?」
「そうや」
「でも侑士からもらったネックレスはつけてるよ」
「それ以外はないん?」
「んー……。たぶんその箱に入ってると思うよ」
「コレか?」
「うん、私が事故にあった時のバックとかが入ってるって言ってたから」
箱を開けてみる――あった。
俺があげた指輪があった。
「これや」
「え?」
「##NAME2##、この指輪覚えとらん?」
「侑士? 何? この指輪、私のなの? 可愛いね」
「――っつ!」
「あ、侑士!」
俺はつい病室を駆け出してしまった。途中看護師に『廊下を走らないでください』とか、注意されたけどそんなの耳に入らなかった。
ただ、その場から離れたい衝動で、走っていた。
「は、は……」
さすがに息が上がり走るのを止めた。今いるのは駅の前だった。
「え、き……」
俺はフラっと駅に入りある場所にいく切符を買った。
「侑士、どうしちゃったんだろう……?」
##NAME2##と向日だけがいる病室。
「あー。うん、えっと」
「…………」
「その指輪は侑士が##NAME1##にあげた物なんだよ」
「え? そうだったんだ……悪いこと言っちゃたな」
「……ま! しょうがねーって! な!」
「う、うん」
「あ、そうだ! 写真とか見てみるか?」
「写真? うん! 見せて!」
「おう!」
ポケットから携帯を出し##NAME2##に見せる向日。
「へー、侑士の小さい頃ってこんなんなんだ」
「おう……てかさ、##NAME1##って携帯どうしたんだ?」
「あー、何か事故ったときにグシャっといったらしい」
「あ、ドンマイだな、うん」
「だよねー、ね、もっと見せて」
「いいぜ、あ、そうだコレはどうだ?」
「何々?」
「侑士が送ってきたんだぜ!」
「へー」
「何か前に俺たちと行ったところを##NAME1##と2人で行った時にとったんだって」
「見たい! 早く!」
「あ、携帯取るな!」
「え…………」
「どうかしたか!?」
写真を見た瞬間頭を抱え込む##NAME2##。
「あ、頭……頭が痛い!」
「あ……医者呼んでくる!」
バン! と扉をあけ病室を飛び出す向日。
「あ、う……何! 頭……。何、これ……私…………」
「あ、あ……。そうだよ…………私――!」
「侑士!」
##NAME2##が病室から出る。
「##NAME1##!? どこいくんだ!?」
「ごめん! 侑士探しに行ってくる!」
「はぁ!? あ……ちょ、待てよ!!」
「待ちなさい! まだ怪我が!」
「ごめんなさい先生! すぐ戻ってきますから!」