中編

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 ##NAME2##と付き合い始めてから3日目。

「『あーん』して食わしてや」


「んじゃ『あーん』」

 今日も##NAME2##のお見舞いに来ていた。今日は祝日で今は12時だ。

「ん、##NAME2##が食わしてくれると100倍おいしいわ」

「ふふ、ありがとう」

「…………」

(前の##NAME2##だったら『私にも食べさせてー』とか言うたやろな……)

(って、何思ってるんや! ##NAME2##は##NAME2##やないか!)

「どうしたの?」

「え、いや」

(確かに行動とか仕草は同じなんやけど……)

(何かちがうんや……何かが足りんのや……)


「……##NAME2##、『あーん』」

「え!? 私はいいよ!」

「『あーん』」

「……」

 食べてくれた。

「どや?」

「おいしい」

「そうやろ!? やっぱ飯は『愛の力』でウマなるんや!」

「『愛の力』って……もう」

(……前の##NAME2##やったら「そうだよね!はい『あーん』! さっきより愛をこめてるからもっとおいしいはずだよ!」とか、言うてたやろな)

「侑士?」

「え? あ、気にせんといて」

「?」


 ガチャ。

「よ! ##NAME1##! きたぜ!」

「あ、向日さん」

「今日、トランプもってきたんだぜ!」

「トランプ?」

「あれ? トランプ、覚えてないの?」

「あ、うん、ゴメン」

「いーっていーって!」

(トランプか)









 半年ほど前、俺たちテニス部は合宿に行くことになった。




 ――今はバスの中。


「ゆーし! 見てみて! トランプ持ってきたんだよ!」

「お、えらいえらい! 何やるんや?」

「やっぱババ抜きとか?」

「お、いいな」

「何なに!? トランプ!? 俺もやるCー!」

「あ、俺もまぜろよ!」

「いーよ、てか皆でやろうよ!」

「それもいな、跡部! いいやろ?」

「あーん? トランプだぁ? ダメだ」

「何でや?」

「いーじゃん! いじゃーん!ね、跡部!」

「あ、おい、引っ張るんじゃねぇよ」





 なんやこんやで、今、俺がマジックをやっている。

「はい、この中から好きなトランプ選んでや、##NAME2##」

「うーん、じゃあこれ!」

「よし、じゃあ俺に見せんように見ろや」

「うん」

「覚えたか?」

「覚えたよ」

「じゃあこのトランプの中に入れてや」

 シュッシュっとトランプをきり、そして1度はこの中に入れる。

「##NAME2##、この箱からトランプ出してみ」

「うん」

「どや? 自分の選んだカード、あったか?」

「えと、ない!」

「そうやろな」

「何で!?」

「それは……」

 スッと、俺は手を開く。そこには1枚の折られているカード。

「あ! 何でそこに!?」

「ふっふーん、すごいやろ! ついでにそれであったとるか確認してな」

「うん。あ、これ……」

 ゴソゴソと開いたトランプの中には――指輪。

「俺からのプレゼントや! いっつも肌身離さずすけててや!」

「うん! 嬉しい! ありがとぅ!」

「ね……左手の薬指にはめていい?」

「もちろんや! 願ったりかなったり!」

「ほぅ。クサイことやるな忍足」

「アホ! 跡部、お前に言われたないわ」

「あーん? なんだと?」






(こんなことあったな。本当にいつもつけててくれたよな……。でも、今は……)

 今、##NAME2##の左の薬指には俺のあげた指輪はない。

「##NAME2##」

「何? 侑士」

「##NAME2##って何もつけてないよな」

「つけてない? アクセサリーとか?」

「そうや」

「でも侑士からもらったネックレスはつけてるよ」

「それ以外はないん?」

「んー……。たぶんその箱に入ってると思うよ」

「コレか?」

「うん、私が事故にあった時のバックとかが入ってるって言ってたから」

 箱を開けてみる――あった。

 俺があげた指輪があった。



「これや」

「え?」

「##NAME2##、この指輪覚えとらん?」

「侑士? 何? この指輪、私のなの? 可愛いね」

「――っつ!」

「あ、侑士!」

 俺はつい病室を駆け出してしまった。途中看護師に『廊下を走らないでください』とか、注意されたけどそんなの耳に入らなかった。

 ただ、その場から離れたい衝動で、走っていた。







「は、は……」

 さすがに息が上がり走るのを止めた。今いるのは駅の前だった。

「え、き……」

 俺はフラっと駅に入りある場所にいく切符を買った。






「侑士、どうしちゃったんだろう……?」

 ##NAME2##と向日だけがいる病室。

「あー。うん、えっと」

「…………」

「その指輪は侑士が##NAME1##にあげた物なんだよ」

「え? そうだったんだ……悪いこと言っちゃたな」

「……ま! しょうがねーって! な!」

「う、うん」

「あ、そうだ! 写真とか見てみるか?」

「写真? うん! 見せて!」

「おう!」

 ポケットから携帯を出し##NAME2##に見せる向日。

「へー、侑士の小さい頃ってこんなんなんだ」

「おう……てかさ、##NAME1##って携帯どうしたんだ?」

「あー、何か事故ったときにグシャっといったらしい」

「あ、ドンマイだな、うん」

「だよねー、ね、もっと見せて」

「いいぜ、あ、そうだコレはどうだ?」

「何々?」

「侑士が送ってきたんだぜ!」

「へー」

「何か前に俺たちと行ったところを##NAME1##と2人で行った時にとったんだって」

「見たい! 早く!」

「あ、携帯取るな!」

「え…………」

「どうかしたか!?」

写真を見た瞬間頭を抱え込む##NAME2##。

「あ、頭……頭が痛い!」

「あ……医者呼んでくる!」

 バン! と扉をあけ病室を飛び出す向日。

「あ、う……何! 頭……。何、これ……私…………」








「あ、あ……。そうだよ…………私――!」







「侑士!」

 ##NAME2##が病室から出る。

「##NAME1##!? どこいくんだ!?」

「ごめん! 侑士探しに行ってくる!」

「はぁ!? あ……ちょ、待てよ!!」

「待ちなさい! まだ怪我が!」

「ごめんなさい先生! すぐ戻ってきますから!」
 

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