中編
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「##NAME2##、きたでー」
今日は家の用事で来るのが遅くなった。
「あ、今日は遅かったね」
「ちょっと用事があってな」
「そっかー。でも、用事があっても来てくれるなんてやっぱり優しいね」
「そうか? 優しいっていうんかな、それ」
「うん、優しいよ。侑士のそーゆーとこ好き」
「え……っ…………」
つぅ、っと涙が流れた。
「え!? ど、どうしたの!? 私何か悪いこと言った!?」
「言うてへん。ただ、嬉しくて……」
##NAME2##の口から『好き』と聞けたのがとても嬉しかった。もちろん恋愛感情が含まれてないことは分かっている。けど、嬉しかった。
俺の頭をなでてくれている##NAME2##。
「何が嬉しかったの?」
「……なんでもあらへん」
「えー、気になるよ!」
「秘密や秘密!」
「ぶー!」
数日後。
「##NAME2##! 誕生日、おめっとさん!」
「わ! ありがとう!」
今日は##NAME2##の誕生日。病室で祝っているところだ。
「……って、2人だけじゃ静かやなぁ」
「はは、親はあと1時間ぐらいしたら来るって」
「そうなんか? あ、せやせや」
俺はゴゾゴゾとポケットの中をあさる。
「ん」
そう小さく呟いて、手に取ったのは小さめの箱。
「はい、プレゼントや」
それを##NAME2##の手のひらに乗っけた。
「いいの!?」
「いいに決まってるやろ」
「ありがと! 開けてみてもいい?」
「いいで」
「ネックレスだ!かわいー!」
「……そ、か……」
「え? ……どうしたの?一気にテンション下がったよ?」
「え?いや、そんなことあらへん」
「そう〜??」
「そや、それつけたるわ」
##NAME2##の首にそっとネックレスをつける。
(……やっぱり……覚えとらんか……)
このネックレスは##NAME2##が記憶をなくす前に、生日にプレゼントすると約束したもの。
(……覚えとらんのはしょーがないんや!)
(そう、しょうがない)
(しょがない――)
「侑士? まだつけられないの?」
「え? あ、もうつけてるで」
「あ、本当だ! やっぱり可愛い!」
首にかかっているネックレスを、本当に喜んでくれている。
「あ、とさ……」
「ん? なんや?」
##NAME2##の顔が赤くなってきている。
「私……もう1つほしいプレゼントがあるの」
俺の服のすそをキュとつかみ、少しうつむいていく##NAME2##。
「なんや? 俺に用意できるのならいいで」
「……し」
「……悪い、聞こえへんかった」
「……うし」
「……え?」
「ゆ、うし……」
「は?」
自分の耳を疑った。
「も、もう1回」
「侑士っていったの!」
(い……今、絶対に俺の名前呼んだよな!?)
「そ……それは、俺んこと好きになったんか?」
コクンとうなずく##NAME2##。
「ほ、ホンマか!?」
「ほ、本当だよ!」
「ホンマやな! やないんやな!」
「だから本当だって!!」
「よっしゃ! レゼントしたるわ!」
「うん!ありがとう!」
嬉しい、すごく、すごく。
嬉しい、のに。
足りない。
なにかが、なにかが足りない。
けど、その『なにか』が分からない。
(なんやろ……この変な感じ……)
(何が足りんのや!?)
(分からへん……)
(嬉しい、嬉しい! ……んやけど何かが……足りない)
ガチャ、とドアが開いた。
「ハッピバースデー! ##NAME1##!」
「あ、向日君」
「お、いいところに! たった今から##NAME2##と付き合うことになったから」
「え!? マジ!? よかったじゃん!」
「ちょ、侑士ぃ……」
「ええやん!」
「あーん? 向日はもう来てたのか」
また、ノックもなしに開くドア。
「あ、跡部さんとその他もろもろ」
跡部のほかに元レギュラー陣と日吉、鳳がいた。
「##NAME2##ちゃん! の他もろもろとかひどいCー!」
「はは、ごめんごめん」
##NAME2##が入院してから何度か皆来てくれた。
(##NAME2##もだんだん慣れてきたな……)
(けど……何か不自然気ながするんや――)