中編
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俺、忍足侑士は彼女、##NAME1####NAME2##とのデートの待ち合わせ場所にいる。しかし、待ち合わせの時間をゆうに30分はすぎているのに、##NAME2##はまだ来ていない。
「ったく、##NAME2##はなにやっとんや!」
さすがに我慢できなくなり、##NAME2##の携帯に電話をする。
〈は、はい!〉
「##NAME2##! 何しとるん!?」
〈ご、ごめん! 寝坊しちゃって!〉
「はあ!? 久しぶりのデートやのに!」
〈ごめん! 今そっち行ってるから!〉
「ったく……きーつけてな」
〈うん! ごめんね〉
「ああ」
プツ、と音をならすと、もう##NAME2##の声は聞こえない。
「はあ……」
「…………」
「…………」
「だー! もう待てへん!」
俺はもう1度、##NAME2##の携帯に電話する。
〈はい〉
「##NAME2##、今どこや?」
〈え?〉
「俺がそっちに行くわ」
〈え? 大丈夫だよ〉
「##NAME2##より俺んほうが足、速いやん」
「う……えっと……あ、ガソリンスタンドの近くにいるよ」
「ガソリンスタンド? 分かった、まっときや」
また音をならし、携帯を閉じる。
「ガソリンスタンド……けっこう離れとるな……」
5分後には俺はガソリンスタンドについた。
「あ、侑士!」
「お、##NAME2##」
道路を挟んむガソリンスタンドの横に、##NAME2##の姿がある。
「今、そっちいくから!」
「おう!」
##NAME2##は信号が青になったのを確認し、こちらに来ようとした。
「…………!」
車にとっては信号は赤のはずなのに、大型トラックが風を切り走りながら、道路を横切ろうとしていた。そのトラックは##NAME2##の横。
「##NAME2##!!」
「え? 何? 侑士……」
ドン!
時の流れが、とてもゆっくりになった気がした。
「##NAME2##――!!」
トラックに引かれ、道路に横たわる##NAME2##。##NAME2##の服は真っ赤に染まり、いくら声をかけても返事をせず目を閉じたまま。
「##NAME2##! ##NAME2##! 目ぇ開けてや!」
「##NAME2##! ##NAME2##!」
「……っつ……嘘や! 嘘だって言うてくれや!」
救急車が来たのは15分後。
病院に着いた##NAME2##はすぐに手術室に。今、手術を受けている。
「あなた! ##NAME2##が……##NAME2##が!」
「落ち着け、侑士くんを見習いなさい」
##NAME2##の母と父が手術室の近くにあるベンチで泣いていた。俺は##NAME2##の母と父には何度か会ったことがあった。
(おじさん、違う。涙が出ないんや……)
(悲しすぎると、涙なんかでないんやな)
俺は妙に落ち着いていた。自分でも不思議なくらい。とても、とても。
手術室のライトがパっと消えた。それと同時にドアから医者が出てくる。
「先生! ##NAME2##は……##NAME2##は無事なんですか!?」
##NAME2##の母は先生にすがるような声を出し問いかけた。
「まだ分かりません。ですが今はまだ生きています」
「本当ですか!?」
「はい、ですが傷が深く、あと何時間かすれば亡くなる可能性もあります」
「なっ……!」
「それか、このまま植物状態になるか」
「そ……な……」
「でも目を覚ます可能性もありますので」
俺は植物状態でもいいとにかく生きてほしい。そう思った。
3日後、俺は学校も休み##NAME2##の病室にずっといた。
「##NAME2##……」
ピ、ピ、ピ、
と、病室に響き渡る機械の音。それは##NAME2##が生きているというなによりの証拠。
「侑士君、学校に行きなさい」
病室に入っていたおじさんに言われるが。
「……嫌です。##NAME2##がこうなってんのは俺んせいです」
俺は3日間、俺がもうちょっと待っていれば。俺が迎えになんか行かなかったら。ずっと、ずっと、そう思っていた。
「君のせいなんかじゃないよ」
「でも……」
「忍足君、大丈夫よ……##NAME2##のことは私たちに任せて」
##NAME2##の母の優しい声が、余計に、俺をつらくさせる。
「ん……」
##NAME2##のほうからかすかながらに声が聞こえた。
「##NAME2##? ……##NAME2##!」
「ん……、?」
##NAME2##はゆっくりとベッドから頭を上げる。
「##NAME2##!」
「ああ、##NAME2##! 良かった、良かったわ……。私先生を呼んでくるわ!」
「ああ、俺も」
2人はそう言って病室から出て行った。
「##NAME2##……」
「あ……」
「良かった。このまま目ぇ覚めなかったら……」
「あの、あなた誰ですか?」
「え?」
「私の……お友達ですか?」
「は? 何言うとるん?」
「え……?」
「俺んこと……覚えてる……よなぁ!?」
(お願いだから……覚えてる言うてくれ!)
「ごめんなさい、分かりません」
「う、嘘や! 嘘や! 自分嘘ついてるんやろ!」
「あ、えと……」
「俺の名前言うてみー!」
「……ごめんなさい、やっぱり覚えてません」
「っつ! 何でや!? 何で覚えとらんのや!」
俺は病室を走って出て行った。