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□君はオトコノコ。
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「ん……」

 私はあくびをして、目を覚ました。

「よく寝たぁー」

 体をそらして上をみる。

 オレンジ。

「…………え!?」


 私の目の前にはオレンジ色の空があった。


「嘘っ! あっ! あのまま寝ちゃったんだ!」

 ベンチをみると、当たり前のようにジロちゃんが寝ている。

「ジロちゃん! 起きてっ! 起きてっ! もう夕方だよ!」

「んー?」

「ほらっ! 早く起きてってばー!」

「ジロちゃん部活いかないと私まで怒られるんだよー!」

 そう、亮とか岳人とかに怒られるの!


「ほらっ! 行くよっ!」

 ジロちゃんの両腕を肩に乗せてベンチから下ろす。


「重っ!」

 だけど2人に怒られるのはゴメンだからそのままジロちゃんをテニスコートまで引きずって行った。








「あー! おっせぇぞ!」

 亮に見つかった。

「ごめんー!」

「あっ! ジローだ!」

 岳人にも見つかっちゃったよ。

「んー? 岳人ー?」

 岳人がピョンピョン飛んでこっちに近づいてくるなか、ジロちゃんが起きた。



「あっ! 向日! よけろー!」

 レギュラーでないテニス部員の飛ばしたボールが、飛んでいる最中の岳人にまっすぐ向かっている。

「え!?」

 空中であたふたしている岳人は、着地地点にいる私のことにまったく気付かない。


「っ!」

 岳人の下敷きになると悟り、体を丸めた。

「危ないっ!」




 ――ドカッ!――



「いって……ってジロー!?」

「え、ジロちゃん……?」

 痛くない、と目を開けると真っ暗で、その暗い理由はジロちゃんが私を包み込んでいて、私の代わりに岳人の下敷きになったと分かってビックリした。


「痛いCー……」

「悪っ……大丈夫か!?」

 岳人は両手をお腹の前のところに浮かせ、固まっている。


「ジロちゃんっ! 大丈夫!?」

「大丈夫だよー」

 顔をゆがめたまま、笑顔をつくるジロちゃん。

「それよりも、怪我してない?」

 大きな手で、私の頭をなでるジロちゃんは、すごく頼もしかった。

「だっ……大丈夫! それよりもジロちゃんは……」

「俺は何ともないよー。そっか、怪我してないんだねー? よかった……」

 ジロちゃんは私の胸で眠りに落ちてしまった。

「ジ、ジロちゃん?」

「あーん? ジローは何やってんだー?」

「それがなー」




 亮が跡部君に理由を説明。




「何をバカやってんだ」


「樺地」

「ウス」

 樺地君が跡部君に携帯を渡すと、跡部君はどこかに電話をかける。

「すぐ車が来るからさっさと帰れ」

「え、車って……?」

「俺様の家の車だ」

「跡部君家の……」












「お待たせしました」

 予想通り車はすっごく大きくて、立派だ。

 ジロちゃんが執事と思われる人たちに車の中に乗せられていく。

「さ、もどうぞ」

「は、はい……」

 ……すっごく抵抗を感じるんですが……!!

 よくこんな車に乗れるな、跡部君は……。









「んー……痛っ!?」

「ジロちゃん!?」

 あともう少しで家に着くというところでジロちゃんが、また目を覚ました。

「んー? 何か背中痛いCー……」

「あれ? 覚えてない……?」

「何が?」

「岳人に……」

「あーそういえば……」

「怪我ないんだよねー? うん、よかったー」

 え、いや……何も言ってないよー私……。

「好きだよー。よかったー」

 ……ん? あれ……?

「って、もう家に着くから! 寝ちゃだめっ!」


「えー?」






「着きましたよ」

「ほらっ! 着いちゃった!」

「……チューしてくれたら起きるー」

「え!?」


 ――チュッ――


「ちょ!?」

「んー! 起きたよぉー」


 ジロちゃんは何事もなかったように起きた。

 チューしてくたらって……ジロちゃんからしてんじゃん!



 ピョンっと車から降りたジロちゃんは、そっと私の手を握った。

「転ばないよーにねー」

「こっ転ばないよ!」

 ドキドキする。

 このドキドキは、何だろう。

 きっと、恋に落ちた音なんだろう。

「転んだらチューしてねー」

「だっだから転ばないって!」



 ――グイッ!――


「キャッ!」

 思いっきり手を引っ張られて、転んだ。

 と、思ったら地面に片手がつく瞬間にジロちゃんに握られていた手が、すごい力で上に引っ張られた。

「あー、転んだCー」

「ちょ、今のはジロちゃんが……!」


「チュー」

 ん、と言い、目を瞑るジロちゃん。



「……もう……///」

 ちょっとだけ、背伸びをして唇を合わせた。


「嬉Cー!」

「ちょ、ジロちゃんっ!」


 ギュッと、抱きしめられた。

 ジロちゃんの体温は、とても温かかった。

 

 君は男の子だよ。

 私の大好きな。

 男の子。






☆終わり☆





 君はオトコノコ

  (それはあたりまえで、そうじゃなくて、でもあたりまえ)



 
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