■Short■

□第二ボタン
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「アニキ!」
「な、なんだよ」
ずっと静かだったチョヌが突然上げた声に、アニキが少したじろぐ。そんなことはお構いなしと正面まですたすたと近寄った。
「…チョヌ?」
「第二ボタンくれ」
手を突き出して放った言葉に、アニキとトロの動きが止まる。
「なっ、お前そんな趣味がっ…!」
「その第二ボタンで藁人形作るから」
「ってオイ」
何時もの会話の調子に、三人が一斉に吹き出す。
「それは半分冗談だけど」
「半分マジかよ」
「本当にくれ。…俺がいつか立派なボーカリストになって、アニキをスカウトに行くまで、アニキのこと忘れないために」
必ずもう一度一緒にあの楽しい時間に戻ろう、と。
屈託のない笑顔を見せたチョヌに、アニキははにかんだ。
「ああ、わかった」
ぶつっと糸が切られた第二ボタンは、チョヌの手の中に落ちた。
いつかまた逢う約束を一杯に詰め込んで。



「あのさぁ、まだ卒業式で学ラン着るぜ?」
「「あ」」


fin


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