萌尽きた物

□一万記念文(サナダテ)
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幸村は政宗を背負いながら青葉城への道を歩いていた。
「…ハァ…」
溜息が出る。何でこうなったのか。
今日は二人で出掛けた。政宗が「たまにゃ外でDateしようぜ」って。(でぇと、とは逢引きの事らしい)
いつも、城の中だったから幸村はそれは嬉しかった。

―が、それは違った。外に出たのがいけなかった。
「Wao!南蛮の毛織りだって?!」
…偶然、というか運が悪いというか。
丁度、異国からの荷が行商人によって入っていた。
―と、その中に。
「幸村ァ!異国の酒だってよ、飲んでみっか!?」
「イエ、某は…」
赤い酒だった。そう、その酒を飲んで―――。



政宗は酔い潰れて、今は幸村の背中で気持ち良さそうに寝ている。
「ハァ…」
出るのは溜息。
「政宗殿、今後は酒を控えるでござる…」
「うっさい、バーカ」
独り言に寝ていた政宗が返した。
「政宗殿!?ね、寝ていたのでは」
「寝てたけど、オメェの溜息がうっさくて起きたぜ」
政宗はそういって、ふぁ、と欠伸をした。
「そ、それではご自分で歩いて下され」
言った瞬間、政宗は幸村の首に回した腕に力を込め、
「NO、このまま運べ。歩くのめんどくせぇ」
と、しがみついた。
微かに政宗の吐息が首筋に掛かる。
心臓が、高鳴った。
「お前ってさぁ…」
政宗が喋るたびに、湿った吐息が耳に掛かった。ドキドキしながら幸村は言葉を返す。
「な、何でござるか…」
「太陽の匂いするよな」
すん、と鼻を鳴らして政宗が自分の後ろ髪に顔を埋めてきた。
「くすぐったいでござるよ、政宗殿」
「いいじゃねーか、お前の後ろなんか滅多に見れねーもん」
喉を鳴らして、政宗が笑う。
『そ、そうではなくて!』
―理性が……!
早鐘に鳴る心音を気付かれない様に、幸村は足を進める。
「オレさぁ、お前の髪好きだぜ」
「………!!」
――『好きだぜ』と、囁く様に言われたその言葉に幸村は、大きく体を反応させた。
「うおっ!てめ、急に止まんな!」
ガクン、と体を後ろに揺らした政宗が抗議の声を上げて幸村の後ろ髪を引っ張る。
「イッ、痛いでござる!」
「てめぇが、急に止まっからだ…う…気分悪くなってきた。オイ、幸村あそこ迄行け」
政宗が指差す先を涙目で見れば、古い寺社が目に入った。
「早く行け!Go!」
『なるべく揺らすな!』と無理を言われながら、幸村は急いで寺社まで走った。


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