萌尽きた物

□三周年サイト用御礼サナダテ
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「政宗殿をお慕いしておりまする」
「へぇ。オレもアンタの事、嫌いじゃないぜ?」
これは、そんなやり取りがあった二ヵ月後。


「某は政宗殿と、恋仲ではないのだろうか?」
「……はぁ?」
幸村の問い掛けに、お茶を注いでいた佐助は間抜けな返事を返した。
「某の思いをお伝えした時、政宗殿は『好きだ』と申して下さったのに…。」
「へぇ」
思い詰めた顔つきで、幸村は言葉を続ける。
「だが!いざ政宗殿の元へ行くと、普通に茶を出され、普通に食事を出され、普通に客間に通されて一日が終わるのだ!」
「はぁ」
力一杯力説する主人を佐助は、間抜けな返答で返す。
注いでいる茶は、すでに器から溢れ返っている。
「佐助、聞いておるのか?さっきから『はあ』とか『へえ』ではないか!」
―さっきから。
そう。さっきから繰り返し何度も、幸村はこの話を何度もしていた。
「あのね旦那。さっきから何度もその話聞いてます。いい加減にオレ様、耳にタコ」
「だから某と政宗殿は!」
「わーかった!それは分かりましたから!」
もう一度同じ事を繰り返そうとする幸村の言葉を遮り、佐助は「で?本音は」と聞く。
「政宗殿は…某の事をお嫌いなのだろうか?」
肩を落として呟く幸村に、佐助は笑いながら。
「ハハッ。もしかしたら、竜の旦那は旦那の事、いいお友達にしか思ってないんじゃない?」
―――友達?
きょとん、としたまま顔を上げて佐助を見る。
「だからさ、旦那の言う『大好き!』とか云う感情は無いのよ、竜の旦那にはね。竜の旦那から見た真田幸村ってのは、『良き好敵手』で『良き話相手』なワケですよ」
『お分り?』と佐助は締め括った。
「……わ」
「うん?」
「分かるかァァァー!!」
怒鳴ると共に、幸村は佐助が注いでいた茶を取り上げると、彼の顔面へと投げ付けた。
流石の忍長も、死近距離から投げ付けられた熱々の湯呑みを、躱す術は(むしろ飛んで来るとは思わなかったのか)が無く、佐助は顔面を押さえながら悶絶する。
「熱ッ!!な、何すんのさっ!?」
「何すんのさっ!ではない!それではオヌシはこう言いたいのか!?政宗殿と某は、一生褥を共に出来ぬと!」
「はあ、まあ、そうですね…って!熱い!旦那!お湯掛けないで!」
小憎たらしい口を聞く部下に、幸村は鉄瓶に入った熱湯を容赦無く注ぎ掛けた。
「待ってよ!聞いてってば!」
「何だ、辞世の句か」
『なれば聞いてやる』と幸村が言えば、『違いますよッ!オレ様こんなんで死にたくないから!』と佐助が言い返す。
「同盟組んでるとは云え敵同士。それなのに竜の旦那がそこまで手厚く遇すってのは……!!」


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