萌尽きた物

□十万御礼アンケ小政第三位現代黒小政
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静寂な部屋には湿った吐息だけが零れている。
皮張りの椅子に全裸で四肢を縛られ、その上秘部には淫猥な玩具を埋め込まれて。
「…先程電話がありました。貴方の行方を知らないか、と」
「……。」
「知らないと言っておきましたがね。もう私と、あの場は関係無いのですから」
語り掛けるように言ってやると、ぼやけた瞳に光が灯るように、ギラリと光彩を放つ。

――良い瞳だ。

全てを見抜き、射抜き、そして虜にする瞳。
「そんな顔しないで下さい……政宗様」
オレの元・主人。伊達政宗。

もともとは主従関係だった。小さな組の組頭と幹部だった。
だが、結婚する際にオレは組を止めた。足を洗った。
女がカタギ、と言うのもあったが……。ともあれ、若い主人は納得が往かず、オレを連れ戻しに来た。


「戻れ。お前に俗世は似合わねぇよ」
「……政宗様。何度云われても私は戻りません」
「…そんなに女が大事か」
柳眉が歪み、隻眼が苛立つ様に細められた。
「…違います」
「ならば帰って来い。オレにはお前が必要なんだ」
手を差し伸べ、元・主人は帰って来る事を望する。
「……貴方は私の何が必要なのですか」
「何?」
自分か。それとも、自分の持つ能力なのか。
問うように聞けば、
「お前、だ」
見据えた目で云う。
「オレは、お前が欲しいんだ」

汚れを知らぬ王者は、堅固たる意志を以てオレに云う。
《本当はオレがどんな人間か分かりもしないのに?》
口元が歪む。押さえ付けていた感情が、暴走しそうだった。
「ならば賭けを致しましょう。これからする賭けに勝てたら…」
「戻るんだな。OK.何でもやってやるぜ」

こうやって汚れを知らぬ王者は、あっさりと罠に填まった。
これが今までの経緯で、話は今に戻る。

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