萌尽きた物

□風邪*(四万御礼戦国サナダテ)
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「ですから、申し上げたのです」
そう云うと目の前の側近は眉間の皺をより深いものにして、深々と息を吐いた。
溜め息だ。
「……そんなに、怒るな」
ぼそぼそ反論してみるが、火に油の結果。側近のこめかみにはびきびきと青筋が走っていく。
「怒らずにいられますか!
伊達家当主とあろうものが雪遊びで風邪を引いたなどと!ましてや、この小十郎の畑まで荒らして!」
『春苗達は全滅、雪下野菜も壊滅です!』と、小十郎は息を捲いて主人、政宗に抗議する。


別に好きで荒らしたワケではないし、悪意があってやった事でもない。
事の真相は簡単だ。
雪が降って「いや、今年も積もったな」なんて庭を見ていたら、雪玉をぶつけられた。
「…Ah?」
飛んできた方角を見れば、目を輝かせた従兄。
「…上等!…乗ってやろうじゃねぇかぁぁぁ!」
「そうこなくっちゃ!」
………と、気が付けば大雪合戦になり、範囲も庭先だけではなくなっていた。
気付いた時には遅かった、というヤツだ。

全身濡れ鼠、雪塗れ、泥まみれ。発見した小十郎の怒りは凄まじいモノだった。
「畑を荒らした挙句…風邪を引くとは…。自業自得と云うものです」
「…ゲホ」
余りにも文句を言う小十郎を、政宗はジロと睨みながら咳き込んだ。
だが、伊達に長年博役をしている小十郎ではない。
睨む政宗なんか何のそので、
「きちんと薬を飲んで安静にして下さい。くれぐれも…雪遊びは控えますよう」
「…わーったから早く行け」
シッシッ、と手で追い払う様にしてやると、小十郎は二言、三言言い置いて部屋から出ていった。


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