隣人

□an extra隣人
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「旦那、本当にいいの?オレなら別に構わないんだけど」
荷物を手にした幸村の後ろから、佐助が気遣うように言ってくる。
「ああ。好きな様に使ってくれ。…まぁ、名義は佐助の名前に変わるが」
「…いや、そりゃ別に構わないんだけどさぁ。何なら三人で暮らしてもいいのに…」
「いや、それは…」
幸村は何とも言い難い顔で笑った。


あの夜から、二日たった。
本来ならば自分の家に政宗さんが来る予定だったのだけれども。
あの、切れ者の明智さんがこうなることを見越してたらしく、
「政宗の荷物は私の部屋に置いたままですよ。全く、自分の荷物ぐらいきちんとまとめて欲しいですネェ」―と、皮肉めいた言葉を言って、続け様、
「アナタの荷物がある限り私は部屋を引き払えないのですよ。面倒ですからそのまま使って下さい。」
などと、したり顔で政宗さんに告げたらしい。

「…ったく、嫌味なヤローだぜ。ま、宿無しじゃ無くなったのはアリガテーけどな」
「はぁ…」
その言葉を聞いて幸村は、ガッカリした。
大好きな政宗さんと毎日一緒に居られる…!と思ってあの夜から徹夜で家中を掃除したのだ。
その落胆ぶりは政宗な目から見ても一目瞭然だった。
薄暗いクラブの一角が、益々暗く闇を落とした感じに政宗は苦笑した。
「ん、でさ…ものは相談なんだケドよ…」
カラン、と手の中のグラスを回しながら政宗は幸村に一つの提案をした。




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