隣人

□隣人〜八幕〜
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店を出たのは、結局午前六時を回った頃だった。
「オォ…超朝だよ…。信じらんね―!」
酒の勢いも手伝ってか、やたらとハイな政宗を後ろに乗せて、幸村は自転車をこいでいた。
幸村も大分飲んだような気がするのだが、少しも酔えなかった。
『やっぱり、政宗さんが一緒だったからかな』、と幸村はこっそり息を付いた。

――ったく、緊張で手も繋げない中学生じゃあるまいし…。(イヤ、それすらできないのだが)

だけど。
楽しかった。
ホント楽しかった。
作業着でデート。それで自転車で2ケツ。そしてこれも立派なドライブ。



帰り道、ゲーセンがあった。
夜遊び帰りの少女達が、店の前に設置されていたプリクラに楽しげに笑い声を立てていた。
『さて、何が楽しいのやら』と、幸村は機械の前にズラリと群がる少女達を不思議に思っていたのだが。
「オイ、撮ってくか。アレ」
政宗がやたら陽気に言うのに。
「…楽しそうですね!」
幸村は呆気なく主張を翻すと、自転車をゲーセンの前に急停車させた。

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