隣人

□パンドラくりすます
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今年もやってきた。
頭を悩ますこの季節。
木枯らしが身に染みるより、百も二百も堪える。
山の様なカタログや、チラシを幸村は右から左へと読んでは閉じ、また開いては頭を抱え悩んでいた。


そしてポツリと――、
「今年の…クリスマスプレゼントォォォ…」
唸るようなくぐもった声で呟いた。

去年のプレゼントは最悪だった。(代わりに政宗さんから貰ったプレゼントは最高だったが)
だからこそ!だからこそ、今年こそは喜ばれる物を!
グッ、と拳を握り締め幸村は再びチラシを手にする。
「何がいいんだ…あ!新型DS欲しい!ってオレが欲しいモンじゃなくって!!」
ぶんぶんと頭を振って、玩具屋のチラシを脇に追いやる。
……が。


「………。」
や、でも、もしかしたら政宗さんも欲しいかもしれないし?
何げに言わないだけで、実は欲しいとか。
「…二人で対戦も出来るし」
「なーに、ブツブツ言ってんだよ。気持ちワリーなァ」
「!」
追いやったチラシに手を伸ばし掛けた瞬間、何時の間にか後ろに政宗が立っていた。
「ナァによ?何、ブツブツ言ってんだよ」
怪訝な顔で問う政宗に、幸村は慌てふためき、広げていたカタログや雑誌を両手で隠すように掻き集めながら、「何でもないです!」と答えた。
そんな幸村を政宗は
「ふぅん。まぁ、いーけどさ…」
と、コートを羽織ながら小箱をテーブルの上に置いた。
「?何スカ…?」
「ちっと早ぇーけど、X'mas presentだ」
「…―えっ…!」
政宗の意外な言葉に、幸村は驚く。同時に、嬉しさが込み上げてくる。
感動と感激と、もう何だ。
いやもう分かんないけど、とにかく嬉しい!
「…………ああああ有難うごごごございまス!」
小さな小箱に掛けられた、リボンを解こうとしたその時。
「STOP!」
まるで犬の躾の如く政宗に怒鳴られ、幸村はその姿勢まま硬直した。
「……な、何?」
怒鳴られ、顔を上げるとそこには何かを企んだ顔付きの政宗がいた。
ニヤニヤ笑いながら煙草を取出して、
「いいかぁ?その箱、オレが帰るまでゼッテー開けんじゃねぇぞ?」
人差し指を幸村の眉間に突き付けて、政宗は云う。
「――…そっ」
そんな無茶な!と幸村は言おうとするが。
「黙れ、駄犬。そんならやらねーよ」
「ああああ!いります!守ります!政宗さんが帰ってくるまで大人しくまってます!」
プレゼントを取り上げた政宗の腕に縋り、幸村は頼み込む。
その様を見、政宗は満足そうに笑う。
「―OK.じゃ、今から八時間。我慢してみせろよ?」
煙草に火を点け、ひらりと手を振って政宗は仕事に出掛けていった。


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