隣人

□フレグランス・キス(フリリク)
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冷たい体で飛び込んだ自宅はまさしく春。
「っあー!あったけー!」
びしょ濡れのコートを玄関に脱ぎ捨て、政宗は大きく安堵の息を吐いた。
「政宗さん、シャワー浴びてきていいっすよ。寒かったでしょう」
「オマエは?」
タオルを(キッチンにある手拭き用の!)頭に被った幸村に聞くと、
「オレは大丈夫っすから。
何かあったかいもん作っときます」
と、言われたのでオレは返事もそこそこに、風呂へ向かった。


冷たい体に熱いくらいまでの湯を浴びて、やっと感覚を取り戻した。
頭から湯を被り、シャンプーに手を伸ばす。
「アレ?」
洗ってから気付いた。
コレ、幸村のじゃねーか。
「……頭がスースーする」
幸村のシャンプーはアレだ。夏に最適なシーブリーズ系。たった今、雨風打たれてきた頭にコレはちと辛いもんがある。
かといって、すぐに洗い流すのも何だかもったいないよーな気がして(むしろメンドくせぇ)、
「ま、いっか」


……………

「あ、政宗さん。暖まりましたか?」
未だ頭にタオルを被ったままの幸村に、軽く返事をしてテーブルに付く。
「風邪引く前にオメェも入ってくれば?」
「平気です。ハイ、政宗さん」
へらっと笑いながら幸村が差し出して来たのは、マグカップに入ったHot Milkだった。
「Thank you.気が利くじゃねーか」
「いえいえ」
砂糖入れて暖めただけです、と笑いながら幸村は向かいに座る。
「オマエのは…?」
オレが聞くと、幸村は
「牛乳それしかなくて…また、買ってこなきゃっすね……っぶし!」
鼻を啜りながら呑気に言う。
「オメーなぁ…」
政宗は呆れた。呆れながら席を立つ。
「ったく」
政宗は冷蔵庫を開け、白ワインや果物を取り出すと幸村に
「Shower浴びてこいよ。あったけーもん作っといてやるから」
言い、台所に立つ。
「いや、オレ大丈夫ですよ?仕事柄慣れて「あ!?」
包丁を持ってドスの聞いたヤンキー口調で聞き返されれば、脱兎の如く幸村は風呂場へと走っていった。
「……世話が焼ける」
息と共に呟くと、政宗は白ワインを鍋に開け始めた。


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