隣人

□フレグランス・キス(フリリク)
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春。
低気圧もやっと遠退き、梅も咲き始めた。
季節は春。ぽかぽか暖かい。



「……春じゃねぇんか!季節はヨォ!!」
暦の上ではとうに春なのだが、自然は人間に厳しく名残雪どころか吹雪をお見舞いしていた。

「さっびぃ!めっちゃくっちゃさっぶい!!」
日中は暖かかったのに、何だこの仕打ち!と悪吐きながら、政宗は薄いコートを掻き寄せる。
運悪くタバコを切らせ、幸村が「車出しましょうか?」と言ったのにも関わらず、徒歩でコンビニに行ったが為、雨風に打たれながら政宗は家路に着いていた。

そんな土砂降りの雨の中。
「……an?」
バシャバシャと降る雨の中、猛スピードで走っている傘がある。
や、傘と云う事は人が差してんだろーけど。こんな日にあんなに走ったら、スゲー泥跳ねじゃねーか。ばっかじゃねーの。

そんな自分もすでに全身濡れ鼠と化しているが、今更泥跳ねもクソもありゃしない。かといってわざわざ汚れの被害を大きくする程、子供ではない。
「…ま、Purmy school childなら、雨でも「政宗さん!!」
……子供どころか知り合いだった。

「政宗さん!傘、持ってきました!」
笑顔で傘を差し出す幸村に、オレは多少なりと呆れながらも云う。
「…も、ちっと早く持ってきて欲しかったんだケド」
自分の様を見て、幸村が慌てて「す、すいません」と謝る。や、別にオメーの所為じゃねーのよ。
急に降ってきたFcuk'nな天気がワリーんであって。
この土砂降りの雨ン中、コンビニまで五分もかかんねーこの距離を、そんだけ走って来るって事は。

オマエ、オレの事探したんだろ?

……ジーンズ泥だらけじゃねーか、誰が洗濯すんだよ。お前、自分でするんだろうな。

「バカ」
「え?何か言いました?」
「なーんも言ってねーよ。さみーから、早く帰ろーぜ」
幸村から受け取った傘をクルリと回して、政宗がもう一言。

「傘、泥だらけじゃねーかッ!!!ボケッ!」


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