隣人

□2011.三十万御礼文
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「政宗さんっ」
「Ah?」
政宗が振り返った瞬間、『ハイ、ザビー』と間の抜けた声と共にシャッター音とフラッシュが室内に走った。
政宗が眩しさに暫らく左眼を瞬かせていると、幸村は『驚かせてスンマセン』と笑いながら謝った。
「…何だ、ソレ」
ヘラヘラ笑う幸村の手に政宗が視線を向ければ、
「インスタントカメラです。昔買ったヤツが出てきたんですよ」
カリカリとフィルムを巻く幸村の手から、政宗はカメラを取り上げる。
「ふぅん…。で?なんで写真なんか撮ったんだ」
「え?ええっと、オレ政宗さんの写真一枚も持ってないじゃないっすか。だからちゃんとした写真が欲しいんですよね」
『オレの部屋に飾りたいなー、なんて』と幸村は照れた。
その言葉を聞いた政宗は、
「あっそ」と、素っ気なくヒトコト洩らすと、手の中にあったインスタントカメラを自慢の握力(測定不可)で粉々にした。


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