キリリク

□きちんと聞かせて?(キリリク)
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気怠くって、指一本動かすのもメンドクサイ。

シテる最中は、厭と云うほどに喘がされ、呼吸をも忘れる程に互いを求め合う。
…けれど、その後に待ち受けているのは、戦でも味わったことのない疲労感。
それは、この男が相手だからか。


未だ火照った体を敷布に投げ出して、政宗は天を仰いでいた。
すると。
「政宗殿」
「Ahー…?」
もう、目蓋すら開けるのが面倒で、政宗は目を閉じたまま返事をした。
「政宗どの」
しかし、もう一度。何やら甘味を含んだ声で幸村が呼び掛けてきた。

何だ、メンドクサイ。このまま寝たい。しかし、あまりにも声が優しくて。渋々薄く目を開いて幸村の方を向けば。
肩肘を付いて、笑顔で胸元の敷布を『トントン』と叩いていた。
「………。」
本当は動くのすらメンドイんだけどなぁ…。
と、思ってもその誘惑にはあらがえんのよ、オレ。

ゴロリ、と寝返りを打って幸村の胸元に猫のように政宗はすっぽりと納まった。
政宗の肩に幸村が腕を回してきた。冷えた肩には、その熱は心地よかった。
「政宗殿、随分冷えてしまいましたな」
「ん…。あったけぇから、いい」
政宗は、小さく呟いて幸村の胸に顔を寄せた。


サラサラと幸村の指が政宗の前髪を撫でた。

気持ちイイな。こーやってる時がイチバン好きかもしんねぇなぁ…。
政宗はそのまま、目を閉じてうとうとと、し始めた。心地好い暖かさに、ふわふわしてると。
「政宗殿、好きでござる」
幸村が囁いてきた。

ああ、知ってる。知ってるよ、幸村。
完璧に睡魔に身を委ねていた政宗に、再び幸村が囁く。
「…政宗殿は…?」
…ん?オレ?うん、オレも好きだぜ。
幸村の手が気持ち良くて、政宗は答えずに目を閉じたままでいた。


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